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第15回 ケアイヴァ・ヘイアウ
●癒しの寺院とカフナの修行場
しかしながら、今回ご紹介する「ケアイヴァ・ヘイアウ」は、そういったヘイアウとは正反対の、清らかですがすがしい聖地なのです。このヘイアウは古来、ヘイアウ・ホオラ、つまり癒しの寺院として利用され、病んだ人々が治療を求めて通う、治療所のような場所でした。カフナ(古代の祈祷師)の中でも薬草治療を専門とするカフナ・ラパアウがここに住み着き、病人の治療に当たっていたほか、弟子たちが修行する、今でいう医学校のような場所だったようです。ヘイアウの裏手にはハーブ(薬草)を育てる庭園もあり、カフナたちは奥深い山中を巡って、様々なハーブを摘んだのだそうです。一帯のハワイアンにとって、一大医療機関(?)として機能していたのが、このヘイアウです。 ●世界で評価されるハワイの薬草
古代ハワイのハーブの一部は高く評価され、今も研究されている真っ最中。たとえば、近年「ポリネシアの万能薬」などと、うたわれているノニ。古来ハワイでは、その葉に結核菌を殺す作用があることが知られ、肺病の薬として活用されてきました。実際、2000年にホノルルで開かれた「環太平洋社会国際科学会議」では、現在一般に使われている結核の特効薬が97%の結核菌に効果があるのに対し、ノニの葉のエキスは95%の効き目があるという研究成果も発表されています。そして、ガヴァ。ハワイ最大の婦人科・小児科病院であるカピオラニ病院をはじめ、ハワイの小児科医は子供が下痢をすると「ガヴァ・ジュースを飲ませるよう」指示します。これも同じく、ハーブとしてのガヴァの効能が、広く証明されているからにほかなりません。 少し話がそれましたが、こんな背景を知っていただくと、このケアイヴァ・ヘイアウの重要性を、さらに理解していただけると思います。勝手な推測で言えば、現在のハワイ大学医学部と、ポリネシア最大の総合病院であるクイーンズ病院の組み合わさったような場所が、このヘイアウだったのではないでしょうか? ●ヘイアウ冒涜した兵士の「その後」
一辺が約50メートルほどの石垣は、かつて3メートル近い高さだったそうですが、今では高さ1メートルほどの石垣が残っているだけ。昔、あったとされるカフナの住居や弟子たちの修行場に使われた茅(かや)葺きの小屋などは既になく、一面に敷き詰められていたという小石も、そこかしこに残されているだけです。でも、ヘイアウの名称や機能、その重要性については、土地のハワイアンたちがしっかり記憶していました。そのため、考古学者がヘイアウを発見する以前、1941年の真珠湾攻撃の直後には、こんな出来事もあったそうです。ヘイアウは真珠湾を見下ろす高台に建っているのですが、真珠湾基地から兵士たちがやって来て、軍事施設の建築のため、ヘイアウの石垣を崩して一部の石を運び去った。その時、近隣のハワイアンは兵士に警告しました。「ここは聖地だ。聖地を冒涜(ぼうとく)するのか」。しかし、兵士は作業を止めませんでした。ところが、その後、この部隊は真珠湾で軍艦の爆発事故に遭い、死んでしまったのだそうです。 ●医師も参加して開かれた儀式
「連日、ホノルルを襲っていた嵐がやみ、儀式の日には晴天が広がった。道路からヘイアウの入口までティーリーフの葉が敷きつめられ、夕方4時、太鼓の音が鳴り響いて、詠唱を捧げるチャンターや王族の子孫、ハワイアン社会の代表者らが古代の衣装を身につけてヘイアウに入場した。その後から、太平洋諸国6ヶ国、アメリカ40州からやって来た医師のグループが、ティーリーフの葉を頭に巻き、白いケープをかぶって続いた。各人が入場するたびに、カフナ・ラパパウが浄化の意味でヒョウタンに入った海水にオレナの葉を浸し、振りかけた。最後にハワイアン戦士の扮装をし、長い槍を手にした20人の男たちが、ヘイアウの守護役として、石垣の外に並んだ...」 古式にのっとった荘厳な儀式がこの後も延々と続くのですが、長くなるので省略します。このように、世界各地から医師までが集まって行われたヘイアウ再開所の儀式の様子を読むだけで、ヘイアウの神聖さが伝ってくるような気がしませんか? ●昼間は絶対に倒れないユーカリの木
もちろん、癒しのパワーを求めてヘイアウを訪れる人々も、いまだに後を絶たないそうです。公園の管理人さんによると、「ハワイアンに限らず、あらゆるタイプの人々が祈りを捧げるため、やってくる」とのこと。さらに、「レイや食物、時にはお金など、様々なものをヘイアウに供えていく」ということでした。 ヘイアウの真横に住んでいるこの管理人さんは、次のようにも言っていました。「ここは住むには本当にいい所だよ。いつも平和なエネルギーでいっぱいで、静かだしね」。時々夜中、家の屋根の上を誰かが歩いていることはあるけれど(飼い猫がいるので猫が屋根を歩くのは慣れっこだそうですが、明らかにそれは猫ではなく、はるかに重い足音だそう。慌てて屋根の上を覗いても誰の姿もなく、その正体は不明だそうです。飼い犬も決して吠えないとか)、ヘイアウの近くに住んでいて、とてもハッピーだと管理人さん。もう一つ、「公園にたくさん生えているユーカリの木が、人がたくさん歩いている日中には決して倒れず、いつも夜間倒れているのも不思議だね」とも言っていました。やはり、エリア全体が、ポジティブなエネルギーで守られているのでしょうか?
余談ですが、かつてカフナたちがハーブを求めて歩いたジャングル(公園内)には今、アイエア・ループ・トレイルと呼ばれる人気のハイキング・トレイルがあります。これは一帯をグルリ一周して戻ってくる、約8キロの手軽なトレイル。この日も、トレイルの入口で輪になって手をつなぎ、お祈りを捧げている地元ファミリーの姿を見かけました。恐らく保護を求める祈りか、山に入る許しを求める祈りをあげていたのだと思います。地域の人々は今もこの山に、特別な敬意を抱いているんですね。次回は、私もハイキングシューズをしっかりと履き(保護を求める祈りを捧げてから)このミステリアスなアイエアの山中を、ゆっくりと歩いてみたいと思っています。皆さんはいかがですか? ◎ケアイヴァ・ヘイアウ Keaiwa Heiau 行き方:ホノルルからH-1ウェスト経由でルート78に入り、アイエア(Aiea)方面へ。スタジアム―ハラヴァ出口で降り、Ulune St.を経てAiea Hight Driveに入り、坂道を約4.5キロ進むと、突き当たりにケアイヴァ・ヘイアウ・ステートパークがあります。ザ・バスなら、アラモアナ・センター発の11番を利用(ただし、一番近いバス停でもヘイアウから約2.5キロの道程)。 (森出じゅん) |
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