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第05回 ロイヤル・モザリアム

投稿者: ハワイ歩き方事務局 更新日:2007年12月05日

第5回 ロイヤル・モザリアム

●地下に眠る王族の亡骸


ヌウアヌの高台に広がる王家の霊廟、ロイヤル・モザリアム

「ロイヤル・モザリアム」(王家の霊廟)。今回は、50人以上にのぼるハワイ王族が埋葬されている聖地の、ちょっと不思議なお話をご紹介します。ホノルルのダウンタウンから、ヌウアヌ・アベニューを北上すること約5分。海を見下ろす高台に、黒い柵に囲まれたロイヤル・モザリアムがあります。前々回の「イオラニ宮殿の怪」で触れたように、かつて王族の亡骸(なきがら)はイオラニ宮殿庭園内の霊廟に安置されていました。しかし、その霊廟がいっぱいになった1865年、現在の場所に新たな霊廟が完成。同年10月30日夜、イオラニ宮殿の旧霊廟から18人の王族の亡骸が、松明(たいまつ)の灯りに囲まれた荘厳な行列とともに、この地に運び込まれたということです。その中にはカメハメハ2世、3世やその妃、そして、カメハメハ大王の10代前の先祖とされるハワイ島出身の大酋長、リロアの亡骸も含まれていました。


柵には24金張りのハワイ王朝の紋章が飾られています

この18人に加え、1865年以降に亡くなった王族、たとえばハワイ王朝7代目のカラカウア王やその跡を継いだリリウオカラニ女王、そのほかにカイウラニ王女、クヒオ王子など、主だった王族達がこの地に埋葬され、その数は53人。緑に包まれた広い敷地の中に、カメハメハ直系王族、カラカウア直系王族など4つのグループごとに分かれた埋葬所があり、それぞれの墓碑の地下に亡骸が眠っています。昔、ハワイには火葬の習慣がなかったので、ほとんどの王族の亡骸は棺に入れられ、ある棺の上には王族だけが着けることができた鳥の羽のマントなどが広げられたまま、安置されたそうです。以前、ロイヤル・モザリアムは王族とその関係者しか訪れることができませんでしたが、1947年からは一般に公開されています(ただし、地下室に降りることはできません)。

●深夜に人の名を呼ぶカマニの木


夜中に人の名を呼ぶという、樹齢140年のカマニの木

この地はまさに一級の聖地なのですが、正直言って今回取材で訪れるのが、少し怖かったことを告白いたします。というのも、先日、ロイヤル・モザリアム近くに住む友人から妙な話を聞いたからなのです。ある夜、彼はヌウアヌ・アベニュー沿いをジョギングしていたとのこと。そして、ちょうどロイヤル・モザリアムの門にさしかかった時、どこからか、「モキハナ!」と呼ぶ声がしたというのです。「振り返ってみたけど、周りには人っ子一人いなかった」と友人。彼はハワイアンですが、その名はモキハナではありません。真夜中でもあり、不気味に思った彼は、家に戻るなり母親にその不思議な声のことを話しました。すると、母親は、「モキハナというのは、何代前かのおまえの先祖の名だ」と言ったというのです。「門のところに、誰かの霊でも立っていたのだろうか」と、いまだに友人は首を傾げています。


カメハメハ直系王族の墓碑(ただカメハメハ大王の遺体はなし)

後日、この話を他の友人にすると、「それは門ではなくて、木の霊だ」というのです。ロイヤル・モザリアムの門を入ってすぐに、大きなカマニの木があります。友人によれば、この木は「Name calling tree」(名前を呼ぶ木)と呼ばれ、「何らかのスピリットが宿る木」として有名ということでした。そんな話を聞いて怖くなった私は、ハワイアンソルト(ハワイでも日本と同じく塩がお清めに使われ、特に岩塩のハワイアンソルトは霊から身を守ると言われています)をバッグに偲ばせ、ロイヤル・モザリアムに出掛けたのでした。


カラカウア直系王族の墓碑。地下には20人の王族が…

ちょうど門に覆いかぶさるようにして、その立派なカマニの木は佇んでいました。写真を撮っていると、庭師の方が話しかけてきました。「この木の写真を撮ってもいいけど、この木にはスピリットが宿っていると言われているんだよ」。次に、霊廟の管理者で敷地内に住むマイオホ氏に話を聞くと、このカマニの木はカメハメハ4世の妃で夫とともにロイヤル・モザリアムの建設を計画したエマ女王が植樹したものだそうです。樹齢140年。マイオホ氏自身は経験がないそうですが、「母親は木に名前を呼ばれたことがある」と同氏。それは1970年代中頃、まだマイオホ氏の母親が管理者をしていた頃のこと(ちなみにマイオホ氏は王族の末裔の一人であり、7代前の先祖でカメハメハ大王の甥だったホオルウが大王により王族の埋葬の担当者に任命されて以来、代々王族の墓に関連する仕事に就いています。祖父もロイヤル・モザリアムの管理者であり、その前は祖父の従兄弟が管理者をしていたそうです)。母親が深夜に帰宅して門をくぐると、「ナマハナ・イカレレ・オカラニ!」と、何者かが名前を呼んだというから驚きです。


レイや州旗も飾られたカラカウア直系王族が眠る地下室の入口

こんなこともあったそうです。1987年、州政府によりロイヤル・モザリアムの大がかりな改装工事が行われた時のこと。カマニの木の太い幹が門の上にまで伸びていたため、倒壊事故を恐れた州は、幹を切ることにしました。当時、管理者だったマイオホ氏の母親は木を切ることに反対しましたが、聞き入れられませんでした。ところが、雇われた業者がチェーンソーで幹を切ろうとすると、なぜかエンジンがスタートしなかったというのです。結局、業者は1時間近くもチェーンソーと格闘しましたが、ついにチェーンソーは作動しませんでした。業者は社に戻り、チェーンソーをチェックしてみると、今度は問題なくすぐに動き始めたとのこと。すっかり怖くなった業者は、州の担当者に電話して「自分はもうあの木を切るのが嫌なので、他の業者に頼んでくれ」と告げたそうです。そうこうするうちに、木の回りに近所の人たちが集まり、チャンネル9TVステーションから取材のカメラまでやってくる騒ぎになったため、州もついに木を切ることを断念したという経緯でした。

●なぜか調子が悪くなったカメラ

実は今回、この木の写真を撮っている時も、こんなことがありました。写真を撮ろうとすると、なぜかカメラのシャッターがおりないのです! その時私は、ハワイで出版されたある本で読んだ話を思い出しました。とある建設業者が大きな岩を動かそうとしましたがビクともせず、カフナ(ハワイアン祈祷師)に相談したとか。するとカフナは「岩から許可を得なければいけない」と言い、祈祷すると岩が難なく動いた、という話でした。そこで、さっそく私も心の中で撮影の理由を述べ、木に許可を求めてみると、今度はカメラがしっかり動いたから不思議です。


敷地内にあるチャペル(頼めば管理者が中を見せてくれます)

おまけにその後、私はマイオホ氏が見せてくれた1枚の古い写真を見てさらに「ゾッ」としてしまいました。それは数十年前に撮られたカマニの木の写真でしたが、何と枝と枝の合間に人の顔がはっきりと映っているのです! この手の写真(俗に言う心霊写真)は曖昧なものが多いですが、その写真はあまりにも鮮明だったので、私も「自分の撮った写真に何か写っていたらどうしよう」と怖くなったのです。幸い、出来上がった写真には特別なものは写っておらず、心からホッとしたのでした。

マイオホ氏も、「木に潜むスピリットが誰なのかは分からない」と言います。誰の霊であるにしろ、それはきっと王族達の永眠地を守る、良き存在なのだと思います。もし、皆さんがこの地を訪れるなら、どうぞ王族達に敬意を払い、短パンにタンクトップ、草履履きなどではなく、せめて長ズボンを着用して、静かに見学することを心がけてくださいね。

ロイヤル・モザリアム
住所:2261 Nu`uanu Avenue(ワイキキからは4番バスで約30分)
電話:587-2590
開園時間:8:00-16:30(土、日曜は休園)

(森出じゅん)

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