• ハワイ出産物語

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    第13回 さい帯血バンク登録


    ●ボーダーラインをクリア
    なんだかんだと目前に立ちふさがるハードルを越えることに夢中になっている間にも時は過ぎ、「訳あり妊婦」も意外とあっけなく34週というボーダーラインをクリア。ここまで来ると俄然「勝負あった〜!」って感じで、余裕さえ出てきます。というのも、満34週で胎児の心肺組織は完成し、体重も標準に達すると言われているため、今後はいつお産になっても大丈夫という状態に突入するからなのです。「さあ、もうこうなったら、産んじゃうしかないもんね」と、なぜか急に腹が据わった私... 今回は全妊婦のルーティンである35週からの毎週の内診に加え、NST(ノン・ストレス・テスト)という検査も受けることになりました。

    NSTとは、超音波で羊水の量をチェックし、あとは30分程ベルトをお腹に巻いて胎動と陣痛の頻度を計測し、胎児の状況を調べる検査です。薄暗い部屋でリラックスして横になるだけでいい楽チンな検査ですが、羊水量が規定より少なくなった場合や、胎動がおかしいなどの異常が判ればすぐに分娩になるため、一応病院行きの荷物の用意は済ませて臨みました。「備え有れば憂いなし」と自慢したいところですが、本当は友人の冷や汗ものの体験談にビビッただけなんですけどね... ちょっとその話を披露すると、健康そのものの妊婦だった彼女、前ぶれもなく34週のある夜に急に破水したため大パニック! 全く予想してなかった展開に(ちなみに第1子は予定日より2週間もずれこんで出産という経験あり)、焦って泣きながら夜中にボストンバックにスリッパを詰めこんだそう。明日は我が身... とひしと感じた私は、いつになく早めに準備をした次第です。ちなみに、ハワイの病院では、パジャマ(といっても、割ぽう着のような後ろ開きのガウンですが)や産褥ショーツ、タオル、ティッシュなどは支給されるので持参する必要はありません。私が用意したのは、歯ブラシと化粧品類、ヘアドライヤー、ガウン、スリッパ、退院時の洋服一式、アドレス帳、母乳育児の資料(マッサージの方法とかが載っていたので。病院では何もしてくれません)くらいかな。ハハハ、「備えあれば...」なんてイバる程の荷物じゃありませんね! ここまで周到に構えて挑んだNSTですが、毎回、羊水量・胎動ともに難なくクリア。すでに母は「もう今日にでも産んでしまいたい」モードに突入しているのに、赤ちゃんはまだお腹の中がお気に入り... という足踏み状態が約1ヶ月続き、結局は主治医がGOサインを出した38週まで、検査に通い続けたのでした。今思い出しても、なんだか最後は長かったな〜。

    白血病などの治療に有効なさい帯血
    あと、臨月に準備したことで、どうしても特記しておきたいことがあります。それは「さい帯血バンク」のこと。さい帯とは「へその緒」のことで、出産後に捨てられているへその緒から採取した血液(さい帯血)は、骨髄移植で使われている髄液と同じように白血病などの治療に活用できるのです。ドナーが入院して採取しなければならない骨髄移植に比べて、さい帯血移植はドナー側の負担が皆無という大きなメリットがあり、現在注目され始めている治療法だそうです。日本でも近年「さい帯血バンク」が設立され、まだ一部の病院ではありますが、出産後のさい帯を寄付できるシステムが稼動し始めたと聞いています。でも、ここまでの知識はあったものの、じゃあ自分のさい帯血を是非とも寄付しようと計画していたかというと、そうでもありませんでした。ハワイに「さい帯血バンク」が存在することさえ知らず、また積極的に捜そうともしないまま(体調に自信がなかったもので...)、ただバタバタと臨月を迎えていました。そんな矢先、絶妙のタイミングで、地元の有力日刊紙ホノルル・アドバタイザーに「Hawaii Code Blood Bank(ハワイさい帯血バンク)」の特集記事が掲載されたではありませんか?!

    それによると、「アメリカ本土の『さい帯血バンク』には、東洋人などのマイノリティのストックはごく僅かしかなく、ましてハワイに多い混血の人に適合するものは皆無に近い状態」とのこと。適合する骨髄やさい帯血が見つからないために、ドナーを待つ間に亡くなってしまう患者(特に病気の進行が早い子供達)が多いという悲しい現実があるそうです。そういえば、数年前にハワイで大キャンペーンをして骨髄移植のドナーを探した中国系のアラナ・ダングちゃんも、長らく待機した後、結局はアメリカ本土で移植手術を受けたという記憶があります(残念ながらアラナちゃんは移植手術後かなり経ってから、感染症で亡くなったそうです)。さて、いかなる運命のいたずらか、現在、私自身が思いもかけず「ハワイ在住の混血児の母である東洋人」になりました。さあ、「さい帯血バンク登録」は他人事ではありません。即座に「自分がやるっきゃない」とひらめいた私は、すぐに資料を取り寄せました。分娩後は捨てられているさい帯で、不治の病で苦しむ人達が救われるのですから、これほど価値的なリサイクルはありません。さい帯を捨ててしまうことは、宝物をドブに捨てるようなもの。主婦としてもそんな「もったいないこと」は許せませんわ〜!!

    ●2001年9月11日
    さて、「さい帯血バンク」に登録するといっても何ら難しい手続きはなく、6ページ程のアンケートに正直に解答するのみ。アンケートの内容は、エイズや血友病に感染していないかを調べるための質問がほとんどでした。登録が認められたら、あとは全てバンクのコーディネーターがアレンジしてくれるので、本人は何もすることは無し。病院へも連絡が入っているので、分娩後に病院スタッフがさい帯血を採取するようになっています。唯一気をつけなければならないのは、登録承認までに約2週間かかるので、出産前に手続きが済むように余裕をもって登録を済ませておくことくらいかなぁ。とっても簡単にできちゃうので、ハワイ出産を予定されている方、特にハワイ在住の方は、「さい帯血バンク登録」を一度考えてみて下さいね。詳細はホームページをご覧ください。

    これは後日談になりますが、こんなに入れこんで、すご〜く楽しみにしていた「さい帯血寄付」が一体どんな結末を迎えたか、知りたくありません? そうです、何事もスムーズにはいかない「訳あり妊婦」の変なツキが、ここにもついてきたみたい... 血糖値が上がった影響を懸念して38週で計画出産することが急に決まり、9月10日に陣痛促進剤を入れるべくカピオラニ病院へ入院。で、その日のうちに産まれるかと思いきや、自然に陣痛が起こり始めていたことや、LDRの空きがなかったことが重なって時間がかかり、出産は翌日の9月11日にずれこんでしまいました。忘れもしないあの同時多発テロ事件が起きた2001年9月11日なのです! 採取したさい帯血はいったんアメリカ本土に空輸されストックされるシステムのため、空港閉鎖となってしまったあの日にはもちろん空輸不可能... ということで、何と、さい帯血の摂取は急遽キャンセルの憂き目にあってしまいました。トホホ... 非常事態とはいえ、なんか今でも未練が残ります。やっぱり、これからハワイ出産を予定されている方で、誰かこの無念を晴らしてくれる人はいませんかぁ〜?? 

    では次回は、9月11日早朝に始まった、まさに波乱の出産の模様をお伝えしますね。お楽しみに!

    プロフィール(私と家族の紹介)

    :愛称「がっちゃん」こと前田和子。ハワイ在住14年目。オペレーション・スーパーバイザーとして大手旅行社に勤務後、長女出産。「ハワイの歩き方」のエディター(育児休職中)で、現在2人の女児(4歳、5ヶ月)の育児に奮闘中。只今の生き甲斐は、子供たちが寝た後にホッとしていただくコーヒーと速読(ヤレヤレ)。
    パパ:ぎりぎり49歳で2女の父になった超遅咲きパパ。ゴルフ三昧の定年人生は望むべくもなく、愛娘のために「死ぬまで働きつづける」のが今後の課題。職業はハワイ諸島の開発予定地の発掘調査を手がける考古学者。特技は子供を放りなげ続けるプール遊び。(当然ながら子供には超好かれます。ここまで体張って遊んでくれる大人はめったにいません)。
    ステフ:長女。現在4歳半。妹を「マイベイビー」と自慢のタネにするのが得意。将来の夢はバレリーナと公言しつつレッスンに通うが、いまだにスキップができない。起き抜けに1枚、食後に1枚、寝しなに1枚と、お絵かきがやめられない元気いっぱいのプリスクール児。園ではクイン君という熱狂的なファン約1名を従えている。
    クリス:次女。2001年9月11日に生まれた強運の持ち主。特技は、夜ひとりで勝手に眠れること。最近自分の足を発見したことがうれしくてたまらない5ヶ月児。腹ばいは苦手。愛称はちいちゃん(ミドルネームがちのちゃんです)だが、近頃はちーちー→ちーにまで簡略化されている。