• ハワイ出産物語

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    第17回 試行錯誤の母乳育児


    ●待ちかまえていた育児
    「無事退院でやれやれ...」なんて言ってる暇もなく、産後の疲れた身体に鞭打って、開始しなければならないのが育児。我が家のプリンセスは2人とも、退院した日の夜に限って、むずがってどうしようもなかったのを覚えています。そりゃあ新生児ですから、病院とは違った環境にすぐ適応できないだろうとは容易に想像できます。が、「母は疲れているんだよ〜!!」。たとえ産後の手伝いに来てくれる身内(おばあちゃんとか...)がいたとしても、オッパイをあげるのは「母」にしかできない芸当。代理はありません。夜中の3時間毎の授乳というのは本当にツライ! まして相手は無秩序が当たり前の新生児。そんなに時間通りに事が進行する訳もなく、時としては2時間ごとに起こされ、ようやくオッパイをやり終えても全然寝ついてくれなかったりしたら、ホント泣きたくなります! 加えてハワイでは、出産後2泊3日というショート・ステイで退院させられてしまうため、母乳もまだ出るか出ないか、身体の回復もこれから... という状態で孤軍奮闘せねばならず、初めての出産なら戸惑ってしまうかもしれませんね。「日本のようにせめて5泊くらいできれば、なにもかも初体験の母親にとってはありがたいのに...」とつくづく思いました。

    まあそれでも、母子ともに健康で、母乳も順調に出ていればさほど問題はないのですが、そうでない場合はちょっと大変です。長女ステフの時がちょうどそのケースにあたり、病院で哺乳ビンに慣らされてしまってオッパイが吸えないステフを抱え、四苦八苦させられた経験があるからです。

    授乳に四苦八苦
    というのも、ステフは母体が高血糖だった影響から低血糖の状態で生まれてしまい、生後2日間は、Intermediate Care(通常の新生児室とNICUの中間にあたるユニット)でブドウ糖の点滴を受けなければなりませんでした。その間、ステフには自動的にミルクが与えられ、母親は電動搾乳器で母乳を出す準備をするよう言われましたが、「こんなんで大丈夫だろうか?」と不安はつのるばかり。加えて、生まれた日の夜中の授乳時に、与えられたミルクを全部戻したらしく、その騒動まで加わって、生後2日目になっても誰も母乳のことなんか触れてもくれません。とうとうしびれをきらし(キレると結構コワイ性格かも!?)「どうしても母乳をやりたい! この状態をなんとかしてくれ!」と暴れてみました。騒動を起こした甲斐あって、病院側からは日本では助産婦さんに相当するであろう、lactation professional(母乳専門家)を付けてくれることになりました。それからは、授乳のたびにIntermediate Careに呼び出してもらって授乳してみたものの、時すでに遅し! 案の定、生来頑固者のステフは、まだ母乳の出が軌道に乗っていないオッパイには目もくれず、泣きに泣いて哺乳ビンを要求するという事態に陥ってしまったのでした。オッパイしか知らない赤ちゃんが哺乳ビンに馴じめないというのはよく聞くし、「当然かも...」とも思えるのですが、その反対はどうにも納得しがたく、「なんで〜? 赤ちゃんはお母さんのオッパイが大好きなはずでしょ?! なんで嫌われるわけ〜?!」と、授乳にほかほかした母子密着のイメージを抱いていた新米ママとしては大ショックだったのです。

    問題は未解決のまま退院してしまったので、その後も、lactation professional(母乳専門家)にアポを取り、「なんとか母乳で...」と頑張ってみました。途中から、オッパイを吸うと装着している細い管からミルクが同時に出てきて、赤ちゃんが自然とオッパイに慣れてくる仕組みになった器具なんかも使ってみましたが、そんなもんで騙されるような赤ん坊ではなかったステフ(一体、何物〜?)は、毎度真っ赤になって怒り狂っていました。2ヶ月くらいは、搾乳した母乳を与えたり、授乳ごとにバトルを繰り返したりしていましたが、そのストレスからか母乳もとうとう枯れてしまい、ついに無条件降伏。早々とミルクに切り替えてしまったのです。

    時には暴れてみるのも手
    お世話になったlactation professional(母乳専門家)はとっても良くしてくれましたが、母乳マッサージなんかはアメリカにはないようで、「う〜ん。これが日本ならもっと良い策があったのかも...?」と当時は疑問に思ったものです。また、この経験で懲りているので、今回の次女クリスの出産時には、最初から「母乳オンリー」と固く新生児室に申し出ました。これはアメリカの育児本に載っていた提案の一つを実行しただけなんですが、言ってみるもんですね〜。出産当日でまだ初乳も出てない時に、ナースが持ってきてくれたのが、「feeding cup」と呼ばれる、新生児への小さな受け口のついたカップ。搾乳器の大手メーカー、Medelaのロゴが入っていたので、ちゃんとこういう時に使うモノが製造されている訳です。「あるんなら、ステフの時に使って欲しかったのに〜!!」と思いつつ、このカップでクリスにミルクを与えてみました。ほんの少しずつ流し込むのにコツがいるので、ナースも手伝ってくれたのですが、まあクリスの反応の面白かったこと! 生後数時間というのに、目玉をキョロキョロさせて「グビグビ」とうれしそうに吸っては、「ヘラ〜」っと口元を緩めるんです。まるでおちょこから日本酒をすするオッサンのような仕草には、ナースともども大爆笑!! こうして最初から飲みっぷりのいいクリスは、母の心配をよそに、順調に母乳で育ち(途中からは飲みすぎて母乳が足りなくなりました)、今ではビールを飲むオッサンのように、牛乳を飲んだ後「ウハ〜」と嘆息しております。

    ハワイ出産で、母乳なり、また他の事でなり、スムーズにいかない時のアドバイスはただ一つ。「Speak Up!」。声を大にして、いろんな人に相談したり、ぶつかったりしてみること。最初から親切にいろんな解決策は提示されないので、手取り足取り説明してくれる社会に慣れている者にとっては、「なぜ、こちらが言うまでやってくれないの?」と思ってしまいます。が、そこでメゲてはいけません。それはそれ、これはこれと割り切って、Speak Up。必要ならば、わたしのように「時に暴れる」のも手なのですよ!

    最後にアメリカのミルクを紹介しておきます。こちらでは、ミルクは「フォーミュラ」と呼ばれていて、粉ミルク、濃縮ミルク(水で薄めて使用)、ready to feed(そのまま)の3種類が出回っています。単価は、粉→濃縮→ready to feedの順に高価になりますが、消化は逆で、粉ミルクが一番胃に負担になるそうです。病院では消化も良く、手間のかからないready to feedを使用していました。120mlのビン入りのready to feedは、キャップを開け哺乳ビンの乳首を装着するだけの手軽さ。普段は値段の安い粉ミルクを使用しましたが、旅行なんかにはready to feed を持参しました。お湯もいらないし、温める必要もなく、重宝しました。色が黄土色っぽいので、日本では「これがミルク〜?」と、ビックリされましたけど... あと、粉ミルクも1種類ではなく、鉄分入り、鉄分抜き、乳糖抜き、豆乳、コーリック(夜泣きが激しいタイプの赤ちゃん)用のスペシャル・ブレンドなどが、カウンターに並んでいます。通常のミルクだとガスでお腹が張りやすかったステフは、いろいろ試した末に乳糖抜きのものに落ち着きましたが、豆乳ベースのものも消化に良いそうです。とにかく、種類が多いのにはビックリですが、日本の粉ミルクに相当するのは鉄分入りのもの。EnfamilとSimilacが2大ブランド名なので、こちらで買い足すことがあるかもしれない子連れ旅行の方は参考にしてみてくださいね。

    プロフィール(私と家族の紹介)

    :愛称「がっちゃん」こと前田和子。ハワイ在住14年目。オペレーション・スーパーバイザーとして大手旅行社に勤務後、長女出産。「ハワイの歩き方」のエディター(育児休職中)で、現在2人の女児(4歳、5ヶ月)の育児に奮闘中。只今の生き甲斐は、子供たちが寝た後にホッとしていただくコーヒーと速読(ヤレヤレ)。
    パパ:ぎりぎり49歳で2女の父になった超遅咲きパパ。ゴルフ三昧の定年人生は望むべくもなく、愛娘のために「死ぬまで働きつづける」のが今後の課題。職業はハワイ諸島の開発予定地の発掘調査を手がける考古学者。特技は子供を放りなげ続けるプール遊び。(当然ながら子供には超好かれます。ここまで体張って遊んでくれる大人はめったにいません)。
    ステフ:長女。現在4歳半。妹を「マイベイビー」と自慢のタネにするのが得意。将来の夢はバレリーナと公言しつつレッスンに通うが、いまだにスキップができない。起き抜けに1枚、食後に1枚、寝しなに1枚と、お絵かきがやめられない元気いっぱいのプリスクール児。園ではクイン君という熱狂的なファン約1名を従えている。
    クリス:次女。2001年9月11日に生まれた強運の持ち主。特技は、夜ひとりで勝手に眠れること。最近自分の足を発見したことがうれしくてたまらない5ヶ月児。腹ばいは苦手。愛称はちいちゃん(ミドルネームがちのちゃんです)だが、近頃はちーちー→ちーにまで簡略化されている。