「ホームシック」というのは、故郷を離れて間もない頃とか、親離れできない若者だけがかかるものだと思っていました。
ハワイに暮らして四半世紀になりますが、何年かに1度、わがふるさと、ニッポンが非常に懐かしくなります。いわゆるホームシックですね。
父が亡くなったとき、義兄が亡くなったときにホームシックにかかりました。
日本の古い映画などを観たときや、高校時代の仲間から「同窓会楽しかったよ」などと連絡がきたときも、望郷の念にかられましたっけ。
帰省したあとも、ホームシックにかかりやすいようです。
実は目下、ホームシックなう。
今回の帰省はいつもより長かったので、ホームシックの度合いもかなり高いようです。
そして日本滞在中に毎日観ていた「とと姉ちゃん」の影響か、〃昭和の暮らし〃への憧れ度がハンパない。
そんなとき、知人のお伴で訪れたスワップミートで、長いこと探していた〃ザ昭和〃な壁掛け時計を見つけちゃいました。
オジさんに「それ動くの?」とたずねたら、
「動くよ。ほら、ちゃんとネジもあるから」とネジを取り出し、「こうやって1カ月に1度巻けばいいの」と実際にやってみせてくれました。
乱雑な店構えを見る限り、「動くわけないでしょ〜」と思いながらも、15ドルという破格の値段に即買いしました。
家に帰ってさっそくネジを巻いて、振り子を吊るしてみたら、カチコチカチコチと動き出した〜!
しばらくしたら、ボーンという時報も鳴るではないっすか〜。午前2時にボーンと11回鳴ったりしますが、ちゃんと動いています。
日本が誇るセイコーの技術力恐るべし。
感動したワタクシは、「この思いをぜひとも伝えなきゃ」とセイコーさんに感謝のメールを送ることにしました。
「セイコークロック株式会社
関係者各位
職人技の詰まった貴社の時計に感激し、ペンを執りました。
ハワイに移住して早いもので28年が経ちました。先月50歳になったワタクシは、この数年、帰省のたびに日本がどんどん遠くなっていることを実感しております。そして最近、何度目かのホームシックにかかっております。
ワタクシにとってのふるさと日本は、やはり「昭和」の暮らしであります。最近では、音楽はあえてレコードで聴いたり、古い映画を観たりして、自由奔放に人生を謳歌していた昭和の時代を、ホノルルの地でひとり、懐かしんでおります。
先日、蚤の市で長いこと探していたゼンマイ式の掛け時計を見つけました。乱雑に床に置かれた時計の表面には「SEIKO」の文字が。
ねじもあるし、ちゃんと動くと店主は言います。「15ドルにまけておくよ」と。その値段なら動かなくても眺めて楽しめばいいか、と購入しました。
帰宅して、さっそくねじを巻いてみました。ぐいぐいと何回か巻いていたら、振り子が動きだしました。5分経っても、30分経っても止まらずに、しっかり動いています。30分ごとに「ボーン」という大サービス付きです。
日系5世の夫も「日本のセイコーは本当にスゴイ」と驚いていました。
半世紀以上前に作られたであろうこの時計、日本からハワイにはるばるやって来て、あっちこっち回って、ときには乱暴に扱われたこともあったでしょう。なのにワタクシの隣で、頼もしげにカチコチと時を刻んでいます。
ベテラン職人の技とプライド。こんな素晴らしい時計を作る日本という国に生まれたことを誇りに思います。
そして、カチコチという音を聞いていると、日本との距離がちょっとだけ縮まった気がします。」
書き終えて、さっそくメールを送ろうと思いましたら、「お客さまからのご質問、ご意見、苦情」のための、極めて真面目なビジネス対応用メールアドレスしか見つかりません。文字数も限られているようで、ワタクシの感謝の手紙の全文など、とても入りきれそうにありません。
「それなら便せんに書いて郵送しよう」と思い、その日はもう遅かったので、次の日に書くことにしました。
不思議なもので、一晩経つと、昨夜の興奮が一気に冷め、「いまどき郵便でこんな感謝の手紙を送ったら、気味悪いと思われるかも…」と消極的になり…
結局、出さずにおります。
もしこのブログの読者さまの中で、「セイコーに知り合いがいる」という方がおられましたら、半世紀前に作られたセイコーの壁時計を、毎日眺めて感謝している日本人がハワイにいることを、ぜひお伝えくださいませ。
キョーコ said on 2016年09月29日
匿名さま
はい、その通りでございます。「壁時計」じゃヘンですねえ。
ワタクシの日本語離れ、かなり深刻です。
ご指摘ありがとうございました。
キョーコ said on 2016年09月29日
Keiさま
「烏帽子岩」の文字をみたたけで、ウルッときてしまいます。
温かいコメントありがとうございました。
匿名 said on 2016年09月28日
壁時計ではなく掛け時計ではないですか?
壁掛け時計とも言うそうです。
匿名 said on 2016年09月28日
Kyokosan
たまにはホームシックになって日本を想いセンチになって下さい。日本の熱い血が騒いで来るかも。
烏帽子岩も想いだして泣きましょう!
Kei