第9回 リーグ第2戦に参戦
●これぞ、職人技! 晴れて、リーグ・デビュー戦を白星で飾った私ですが、翌週はラタが駆けつけてくれたお陰で、みんなの試合をじっくり見ることができました。というよりも、「見ていたかった、出たくなかった」というのが本音なんです… なぜなら、「チーム・ハスラー」と堂々と名乗り、ここベルベット・タッチで働いているスタッフ達で作っているハウス・チームと当たるからなんです。ビリヤード場で働いているだけあって、チームのメンバー5人がみんなうまい! この日までの試合ではランキング1位の座を譲ってしまっていますが、勝率は1位のチームと同じながら、ゲームのセット率により惜しくも2位に甘んじている、そんなチームなのです。 メンバー全員がみんなBクラス以上。5人のうち4人がA+以上なんです。いくら、私がそんな人たちにハンディキャップをもらったところで、一度ミスしたら全ての玉を入れられてしまう。いや、下手したら、1度も玉を撞くことなくゲームが終わってしまうかもしれません。彼らのこれまでの試合振りから見て、そのことを本能的に察知した私の脳は、「出たくない!」と言っています。そして、私のそんな胸の内を知ってか知らずか、キャプテンのライアンは「ノリコ、今日はラタが来たから、ゆっくり休んでいいよ」と言ってくれ、私はホッと胸を撫で下ろしたのでした。
試合の結果は、2対3と我らがミステリー・メンもチーム・ハスラー相手に大健闘しましたが、惜しくも負けてしまいました。うちのチームで互角に戦えたのは、A+のライアン、Aのスコットだけで、あとはハンディキャップがあったにも関わらず、涙を呑んだのでした。他の3人も決して下手なわけではないのですが、相手とのレベルがあまりにも違いすぎました。なんといっても、試合運びがものすごくうまいんですよね。ブレイクで玉が散らばった後に、9番の玉を入れることを既に考えているようなんです。「2番があの場所にあるから、1番を打った後にキューボールがこの位置に転がるように打とう」というように、9番までの筋書きを頭の中で組み立ててゲームをしてるんです。やっぱり、これができるのがAクラス以上ですよね。他の人もこうなるように努力はするんですが、ちょっとキューボールを打つ角度が違ったり、他のボールに当たって位置が変わったりとミスしてしまう。けれども、このチーム・ハスラーのメンバーたちはミスがない! それじゃ、うちが負けるのも無理はないですよね。とにかく、職人技ともいうべき妙技の数々を目の当たりにして、「エクセレント!」とついつい口にしてしまっていました。 ●2戦目に参戦
ゆっくりと試合観戦? した翌週、今度は私が出場することになりました。相手は、ニックというレベルDの選手。レベルはそんなに変わらないので、ハンディキャップはラスト2。つまり、「最後にテーブルに残った2つのボールを落とせば勝ち」ということ。この間のラスト3よりはハンディとしては少ないけど、ないよりいいですよね。そのハンディを持って、いよいよ試合に臨みます。対戦相手のニックといつものようにお互いの健闘を称えあいながら握手をし、クォーターコインでどちらがブレイクするかを決めました。 彼のブレイクから始まった第1試合目は、玉がきれいにテーブルの上に散らばり、私が1番から3番までを決めた後、彼が4番から7番の玉をポケットに沈めました。そして、その後も8番をきれいに決めて、いよいよ最後、9ボールを残すのみ。しかし、テーブルに目をやると、9ボールがテーブルのヘリに当たっていて、ポケットに狙うには少し難しい位置にあります。テーブルのヘリにボールが当たっている場合、当たっていない場合と比べるとポケットに入れるのは簡単じゃありません。正確な角度で玉が当たらないと、テーブルのヘリにバウンドしてしまうからなんです。案の定、彼は9ボールを外し、私の番が回ってきました。しかも、テーブルのヘリから外れて、ポケットの目の前にあります。「これはチャンス」。しかし、ココで大問題が発生。キューボールがポケットと9番ボールの延長線上になく、非常に難しい角度に位置していたのです。
一番近いポケットに入れるとなると、9番ボールの端にうまくキューボールを当てなければなりません。「うわー、無理だわ、これ!」と思ってみんなの方に目をやると「大丈夫!」とサインを送っています。「え? 何が大丈夫なんだ? このショットが?」と一番近くにいたライアンに聞くと、「そう、この方向でいいんだよ。ちょっと難しいけど」というのです。半信半疑ながらも、ライアンがいうんだから間違いないでしょう。そう思って、ポケットの方向と9番ボールの位置を確認しながらショット。すると、キューボールはこつんと9番にあたり、その勢いで9番はヒョロヒョロっとポケットの方に転がっていったのです。「ストン!」。その瞬間、みんなが「What a shot!!」と握手しにきてくれました。What a shot… 文法的には、「What a nice shot!」が正しいですよね。でも、ロコ達は形容詞の「nice」をよく省略して使います。感嘆の意味を強くしたいのか、はたまた状況からnice shotだと判断できるからかはよく分かりませんが、いわゆるスラングの1つですね。「いやぁ、正直入れられるとは思ってなかったよ」とはライアン。「そんなー、だってあなた大丈夫って言ったじゃない!」。とにもかくにも、死闘の末、ようやく1ゲーム目をものにしました。その後、3ゲーム目こそ落としたものの、ラスト2のハンディキャップに助けられ、4対1でニックとの勝負をつけ、2戦目も無事チームに貢献することができました。そして、その日の試合は、スコットがブレイクで9番ボールを落とすなど素晴らしいショットを見せつけながら、5対0で圧勝! またまた、勝ち星を1つ増やしたのでした。
●ビリヤード場は霧の中!? ●ベルベット 14台のプールテーブルがあるビリヤード場。曜日により、割引特典あり |
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