昔、この男にかかれば出来ないことはないと言われた力自慢の神、「マウイ」がいました。マウイには、イアオという娘がおりましたが、そのイアオは成長するにつれ誰もが振り返るほど美しくなっていきました。そんな一粒種のイアオがかわいくて仕方ないマウイは、幼い頃から娘のイアオに「ハワイの島々の中で一番の富を持つ立派な王としか結婚を認めないぞ!」と常々言い聞かせるのでした。そんな父親の言いつけをよそに、年頃になったイアオは、半漁人の神、「プウオカモア」と恋に落ちてしまいます。二人は、マウイの目を盗み、隠れてこっそりと会う日々を繰り返していました。ところが、ある日、いつものように人目を盗んで会っているところを町の人に見られてしまい、父親のマウイに言いつけられてしまいます。
二人の密会を知ったマウイは、怒り狂い、その怒りの叫びは火山の女神、ペレのところまでも響き渡るほどでした。その叫びを聞いて驚いたペレは、マウイのもとへ飛んでいき、事情を聞くと、マウイは愛娘のイアオがプウオカモアと会っていること、そして二人が二度と会えないようにプウオカモアを殺すつもりだということを話しました。すると、ペレは、「マウイよ、プウオカモアは私の友人。どうか命だけは助けてやってくれないか?」とマウイを説得します。しかし、マウイの怒りは収まらず全く聞き入れてくれません。そんなペレとマウイのやり取りを、帰宅したイアオが偶然聞いてしまい、ペレと一緒にマウイの怒りを静めようとします。「お父様、どうかあの人の命だけはお助けください。私はあの人なしには生きていけません」と、イアオが涙を流してプウオカモアを殺さないように頼むと、娘が号泣し、恋人の命乞いをする姿を見て不憫に思ったマウイは「よかろう。そうしたら、あの者の命だけは助けてやろう。お前を悲しませたくないからな。」と言います。イアオは、父親のマウイに抱きつき、礼を言いました。「あぁ、お父様、ありがとうございます」。イアオが喜んだのもつかの間、「しかし、お前たちの恋路を許すわけにはいかん。あいつを岩に変えてやる。そうすればお前はその岩を見てあいつを思い出すことができるだろう?」とマウイは言い放つと、次の瞬間プウオカモアを岩に変えてしまったのでした。そして、その岩は、いつしか「イアオ・ニードル」と呼ばれるようになりました。 |
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