編集部:ヒルガンドの創業者は、ドイツ出身でブルースさんのお母様でいらっしゃるヒルガンド・バッキーさんですよね。ドイツからハワイに来るというのは、当時は珍しいことだったのではないでしょうか?
ブルース・バッキーさん(写真右、以下ブルース):彼女は、戦争のためドイツに来ていたハワイの男性と出会い、結婚して1940年代に彼と一緒にハワイに来たんです。
シャーリー・バッキーさん(写真右、以下シャーリー):当時のハワイで、ドイツ人の女性がハワイに来ることはとても珍しいことだったと思いますよ。
ブルース:しかも彼女は英語はあまりしゃべれなかった。 でもドイツで、マスター・ゴールドスミス(金細工師の名誉的称号)で15年もの経験があり、ハワイに来てからもその経験を活かして仕事に就いたわけです。 はじめはローカルのジュエリーブランドでデザイナーとして働いていましたが、ハワイで初めての高級ジュエリー店と言われる「Dawkins Benny Jewelry」から声がかかったんです。Dawkins(ドーキンス)とBenny(ベニー)という2人の男性が1873年に始めた店ですが、王族のためのジュエリーを作る宝石店だったんです。その店が後の「ヒルガンド」となります。
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編集部:当時のハワイでジュエリーとはどういう風に捉えられていたのでしょうか?
ブルース:1950年代、60年代はサファイヤ、ルビー、アクアマリン、タンザナイトといったカラーのジュエリーを中心にしていましたね。他のジュエリーストアではダイヤモンドが主流でしたが。そして現在でも、まわりのジュエリー店はダイヤモンドや時計といったものを中心に扱っていますが、ヒルガンドは今店頭を見てもわかるように、カラージュエリーが半分近くあるんです。 それはヒルガンドは、色つきの宝石に対する知識が深いからに他なりません。しかも彼女は、宝石をカットするのに世界一と言われる「Idar-Oberstein(イーダーオーバシュタイン)」という場所をいつも使い、すべてハンドメイドで作っています。 彼女自身が大きくてカラーの宝石を好んでいましたからね。
編集部:当時、そんな高価で貴重な宝石を見つけることは簡単なことではなかったのではないですか?
ブルース:もちろん。ハワイでは宝石はとれません。でもジュエリーショーや宝石ショーが世界中で開かれており、そういうところで見つけていましたよ。
シャーリー:それに彼女はジュエリーデザイナーとして有名で評判もあったから、彼女に宝石を見せに直接持ってきた人もいましたよ。
編集部:ではヒルガンドのこだわりは何でしょうか?
ブルース:「極上のデザインと極上の感動」でしょうか。彼女はゴールドマスターや宝石店のオーナーでありながら、第一にアーティストとして考えていました。ビジネスのことよりも、いかに素晴らしいジュエリーをデザインするか、宝石の値段よりも石やデザインのクオリティのことをいつも考えていたんです。 彼女はジュエリーをデザインするときに、紙の上にジュエリーを置いて石とのつながりを直感的に考えていました。それは私も同じようにやっていることですが、石とコミュニケーションをとるというようなことですね。
シャーリー:例えばショーケースの中に何百とあるジュエリーの中から、「コレ!」と気に入ったものを一つ見つけるとき、それは石の方が自分を見つけてくれた、石と自分がつながったんだ、ということなんです。
ブルース:宝石は人工的なものは何ひとつなく、何百年もの年月をかけて自然が作ったもの。それをヒルガンドが見つけて美しくカットし、世界中のお客さまがそれをヒルガンドで見つける。そしてそれを身に付け、その方が亡くなった後は、その人の思い出や歴史と一緒にファミリーが譲り受ける。石にはそういうストーリーが宿り、だから同じものは一つとして無いんです。
ブルース:他のジュエリーストアは同じものを世界中で揃えています。でもヒルガンドは、同じものはひとつとしてありません。石を見つけて、カットし、それを磨き、デザインに合わせて組み合わせていくといった一つ一つの過程をすべて手作業で行っているんですよ。 たとえば(無数のダイヤモンドが大きな石の周りを囲んでいるリングを指して)このダイヤ一つ一つを、このサイズに合うものを選びだし、手作業で職人が行っているんです。
編集部:これは難しい質問なのかもしれませんが…。数あるジュエリーの中で、ヒルガンドが一番誇りを持っているジュエリーを一つあげるとしたらどれでしょうか?
ブルース:(しばらく考えた後) 簡単ですよ、カラーのジュエリーですよ。これは質問の答えになっているかわからないけれど…ヒルガンドは新しくジュエリーを創るとき、それまでのどのジュエリーよりも最高なものを目指して創っているんです。それこそが私たちが誇りにしていることです。
編集部:ヒルガンドはイエローダイヤモンドにもこだわりを持っているとお聞きしています。他の店のイエローダイヤモンドとどこが違うのでしょうか?
ブルース:他のジュエリーストアも色々行ったけれど、ヒルガンドは最高級と言われる“エタニティダイヤモンド”をすべてのイエローダイヤモンドに使っているという点が大きく他と違います。
シャーリー:「パーフェクトダイヤモンド」と例えられて、吸い込まれそうなほどどこまでも輝いていることから、Flawless Diamond(究極のダイヤモンド) と呼んでいるんですよ。
ブルース:他のジュエリーストアでは一般的なことではないのですが、ヒルガンドでは直接イエローダイヤモンドを買い付け、基本的にカスタムメイドでデザインもしているんです。だからヒルガンドで扱っている60万ドルのイエローダイヤモンドが他だったら100万ドルの値段くらいになっていることも珍しくないんですよ。
編集部:ヒルガンドがどうしてこれほどにジュエリー業界で名を馳せ、セレブリティなどからも厚い信頼を得ているかよくわかりました。本日はありがとうございました。
(2014年12月更新)
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