ココナッツ・アイランドというかわいい名前の島が、ヒロにある。
ゆるやかな 弧をえがくヒロ湾には、そのちょうど真ん中あたりにチョンと突き出す半島がある。 公園やゴルフコースが点在するこの半島に、寄り添うように浮かぶのがココナッツ・アイランドだ。
というわけで、今では誰もが気軽に行けるココナッツ・アイランドだが、古代のハワイアンにとっては、実はとても神聖で厳かな場所だった。
かつて島はモクオラと呼ばれていた。意味は”命の島、癒しの島”。新鮮な湧き水を採集する場所だったという。島の東側の入り江には聖なる岩があって、周囲を泳ぐと病気が癒されると信じられていた。また素潜りでこの岩を3周すると長生きするとも言われた。 島内にはパパ・ア・ヒナと呼ばれる平たい石があり、この下にへその緒を隠して、一晩ネズミに食べられなかったら、女神ヒナのマナ(スピリット)に守りにより、その赤ん坊は強く健康に育つとされていた。
ハワイアンにとって重要な神殿・プウホヌアも島にあった。禁令を破った罪人や敗残兵たちが逃げ込む駆け込み寺的なプウホヌアは、ここにいる間は誰も罪人に手を出す事はできず、また神官にお祓いをしてもらうと罪が晴れるという聖地だった。
ハワイの伝説に寄れば、この島はマウイ島のかけらだという。半身半人のマウイがビッグアイランドとマウイ島をひとつ にくっつけようと試みた時に壊れて出来た破片だと。またもう一つの伝説では、モクオラは、飢饉の時に亡くなった男の子供だという。ウルという名のこの男は、ココナッツ・アイランドに近い湧き水のそばに埋葬された。翌朝、その場所にはたわわに実をつけたパンの木(ブレッド・フルーツ)がすっくと立っていて、人々の飢えを救ったという。ちなみにウルはハワイ語でパンの木のことだ。
さて、そんな謂われ深いココナッツ・アイランドであるが、ここはなかなかフォトジェニックな場所でもある。写真はこの10月に撮った、とある早朝のスナップ。マウナ・ケアとマウナ・ロアのシルエットが遠くに見え、そのちょうど真ん中にココナツ・アイランドがぽっかり。この日、海はとても澄んで美しく、すぐさま水に飛び込んで、島まで泳いでみたい誘惑にかられてしまったのだった。ハワイアンたちがなぜこの小島を特別に思ったのか、ちょっぴり解るような 気がした瞬間だった。
ではまた次回。A hui hou!
(2012年10月更新)
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