古代ハワイアンのヒーリング・パワースポットやヘイアウ(神殿)巡りが脚光を浴びていますが、ハワイアンの血を引く方たちにとって、へイアウ(神殿)はご先祖様が眠り、神聖な儀式が行われていた重要な歴史・文化遺産。最近、オアフ島の中心にある聖地クカニロコ(バースストーン)の管理団体から「日本の旅行者の方々に、ハワイ王族の生誕地であるこの聖地について理解を深めてほしい」とコンタクトを受け、編集長の野崎彩子がこの聖地の管理者であるトム・レンチャンコ氏からメッセージを頂きました。(ハワイのパワースポットでのルールはこちらから)
ハワイ州歴史文化財、「聖地クカニロコ・バースストーン」
■梨花のお気に入りパワースポットの管理者から緊急メッセージが… オアフ島の中心部にあるワヒアワの町にあるのがハワイ王族の生誕地であった聖地クカニロコ。現在、この場所は「ハワイ州歴史文化財クカニロコ・バースストーン」としてハワイ州と地元ボランティア団体「ワヒアワ地区ハワイアン市民協会(HCCW)」によって保護されています。今回は、ハワイの歩き方編集長の野崎彩子がクカニロコの公式管理団体の副会長であり、ハワイ王族の血を引くトム・レンチャンコ氏を訪ねました。ハワイアンの聖地での作法に則って、入場許可を求めるオリ(詠唱)を奉納してから入ります。聖地には爽やかな風が吹いています。 …ふと神殿の真横を見ると、ラウハラ編みのゴザに精悍な顔つきの男が座っています。まるで悟りを開いた禅僧のように飄々としているのに、かもし出す雰囲気は戦士のような人。それなのに、目が合うと、そこからは限りないアロハの光が放たれています。 |
■ハワイアンの源、クカニロコの土地の魂を守る者
「ああ、この方が聖地クカニロコを護っていらっしゃるハワイアンの方なのだな」と納得がいきました。挨拶を終えると、クカニロコと彼自身とのかかわりを話して下さいました。「ある日、お袋から電話がかかってきて、『お酒を買ってきて、クカニロコのバースストーンにひとつひとつかけて来なさい。終わったらすぐに電話しなさい』って言われたんだよ。それで、言われたことをきちんと全部メモしておいて、実行したんだ。終わってから、電話したら『これは我が家に先祖代々伝わってきていることで、お前の一生の仕事だから』と言われたんだ。その時から、この聖地の世話を35年間してきたんだよ」とレンチャンコ氏。クカニロコの歴史を3時間以上にわたって熱く語って下さいました。ハワイアンの土地問題活動家としても知られているレンチャンコ氏の、この聖地の管理者としての肩書きを教えてもらったところ、”Kahuaka’i ola ko laila waha olelo ‘Aha Kukaniloko/Koa Mana mea ola kanaka mauli” (宇宙の魂に満たされた我々ハワイ人の源、クーカニロコの子孫を代表する代弁者、土地の魂を守る者)という返事が返って来ました。長い… それにしても長すぎる… しかし、この中にはクカニロコがハワイアンにとって、先祖とのつながりを象徴する魂のふるさとである重要な場所、ということがはっきりと示されています。 |
■生命誕生のプロセスは、ハワイアンにとって一番大切なスピリチュアルな教え
聖地クカニロコは、オアフ島のへそ(ハワイ語でピコ)、つまり中心にあります。クカニロコの「クー」は、「しっかりと受け止める」。「カニ」は産声(泣き叫ぶこと)こと。「ロコ」は「子宮」を意味するので「クーカニロコ」は「子宮から出た産声をしっかりと受け止める」という意味を持つのだそうです。この場所から、ワイアナエ山脈を見上げると、山並みには子宮に生命を宿した美しい女性の体のシルエットが表れます。「真実は小説よりも奇なり」といいますが、自然の造形も不思議なもので、まるで大地に女神が横たわっているようで、見ていると崇高な気分になります。これは、ハワイアンの間では「ワヒネ・ハパイ」と呼ばれてきたもので、カアラ山の膨らみはお腹の部分で、モクレイアは足の部分にあたります。これを見ると、いかに古代ハワイアンが生命の根源である女性の子宮を尊重し、お産という生命誕生のプロセスを大切にしてきたか、ということがわかります。 |
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■バースストーンが証明する古代ハワイアンの進んだ文明とは?
聖地クカニロコは、「古代ハワイアンの王族がお産をした場所」というだけでなく、古代ハワイアンが非常に高度な天文学や航海術、数学などの知識と技術を持っていたことを証明する歴史的な遺産でもあります。神殿のちょうど真ん中にある大きなひし形のポハク(石)には、ペトログリフ(幾重にも重なった円)が描かれています。レンチャンコ氏によると、これは古代ハワイアンが高度な技術を持っていた証なのだそう。この石は、正確に赤道に沿って置かれており、航海におけるナビゲーション・ツールの1つであり、日時計の役割も果たしていたということです。この聖地の場所設定も、高度な天文学や数学の知識を踏まえて行われたと言われています。その証拠に、この場所から見ると春分の日と秋分の日にはカアラ山の山頂(女神のお腹の部分にあたる場所)を太陽が通過するようになっているのです。聖地クカニロコは、時代を超えて古代ハワイアンが数学の知識を持ってお産の日程を計算したり、天体観測をしながら高度な航海術を学んでいたことを伝えてくれています。バースストーンの詳しい解説はビデオでどうぞ。 |
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■聖地クカニロコへの一番大切な捧げものとは? 最後にこの場所を守るレンチャンコ氏から以下のようなメッセージを頂きました。「聖地クカニロコを訪れるときに大切なことは、自分の土地を大切にするようにこの聖地を尊重することです。この聖地に捧げる贈りものやホオクプ(お供物)を持ってきてもいいでしょう。でも、一番大切な捧げものは、あなた自身なのです。アロハの精神を持って聖地に入ること。そして、アロハを受け取り、アロハと共に去ります。この聖地に対して、ここで出会った人たちに対して、ここに関わる人やスピリットたちに対して、お礼(マハロ)を言いましょう。クカニロコは我々ハワイアンにとって精神のヒーリングの場所であり心から大切に守っていきたい聖地なのです。ここは、ハワイアンの血を引くものが集まり自分たちの系譜と伝統を受け継ぎ、先祖とつながるための神聖な場所です。ですから、ご自分の家族のお墓や自国の神聖な文化遺産などを尊重するようにハワイアンの聖地クカニロコを尊重してください」。
野崎彩子
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●ハワイ州歴史文化財クカニロコ・バースストーン アクセス:ワイキキからH-1経由でH-2に入り、7番出口下車。カメハメハ・ハイウェイでワヒアワの町を過ぎ、橋を過ぎて次の信号を左へ曲がるとすぐ。バスならアラモアナ・センターから52番バスで。 駐車場:駐車場のスペースが限られています。(車上荒らしなどの盗難も報告されていますので、レンタカーで行かれる場合は要注意です)ご参考に、ハワイアンの聖地を訪れる際のルールをお読みください。
●デュークス・クロージング(クカニロコ・オフィシャルTシャツ取り扱い店) 住所:723 California Ave, Wahiawa, HI 96786 電話:(808)621-5331 クカニロコ・オフィシャルTシャツ:赤とグリーンの2色。売り上げの一部は、正式管理団体である「ワヒアワ地区ハワイアン市民協会」に寄付されます。 |
ハワイのパワースポット(聖地)に行く前に… |
2009年2月にオアフ島ワヒアワにある聖地クカニロコ(バースストーン)で、この聖地を守る公式管理団体、ワヒアワ地区ハワイアン市民協会(HCCW)の副会長を務めるトム・レンチャンコ氏にお会いしました。ハワイアンの王族の血を引くレンチャンコ氏は、先祖代々この聖地を守ってきた家系の方です。ここで彼からお話を聞くことになったのは、ハワイの聖地が旅行者によって荒らされて、ハワイアンの方々が困っているらしい、ということを聞いたからなのです。近年のパワースポット・ブームによって、この場所へ個人の旅行者だけでなく観光のグループツアーまでが来るようになりました。そこで、私も観光に関する情報を発信する者として、「どうすればハワイアンの文化を尊重することができるか」ということを深く考えさせられました。実は、私たちがこの神殿に入った日、いろいろなことが起きました。まず、来るはずだった一人が早朝から激しい嘔吐に襲われて、来れなくなってしまったのです。そして、入場するときに祈祷をしてくださったカフの方の車の窓が何者かに壊されてしまいました。また、一緒にここへ行ったうちの1人の子どもが帰宅後に激しい嘔吐に襲われて体調を崩してしまいました。ハワイ王室霊廟の館長、ビル・マイオホ氏とハワイアンのカフ、カイミロア・ダハンさんは「貢献したい、役に立ちたい」という与える気持ちがない人は、聖地のマナを感じることができない、と仰っていました。もちろん、今回行ったメンバーは「ハワイの文化遺産を守るために何かしたい」という人ばかりでしたが、ふと「ハワイの神殿が荒らされてしまうのには、パワースポット・ブームに火をつけて、ハワイから情報発信している私たちにも責任の一端があるからではないか」、と思いました。これからは、ハワイを訪れる人がハワイアンの聖地を本当の意味で尊重できるようになり、マナを感じられるような情報を提供していきたいと決意を新たにしました。(ハワイの歩き方編集長:野崎彩子) |
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(2009年3月更新)
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