第5回 古典フラ・カヒコ | ||
練習での表情は真剣そのもの |
●カヒコ? 難しいのかな?
次のレッスンまでに腰を左右に振る「アミ」をたくさん練習して、みんなを見返してやる! という私の闘志も虚しく? 今回は「アミ」の必要がない古典フラを習いました。古典フラは、いつも見慣れている腰を振ったり、腕を波のようにうねらす動作がいらないようです。今回もレッスンに入る前、メアリー先生から、曲について、またカヒコと呼ばれる古典フラについての説明がありました。普段はニコニコと笑顔を絶やさない、優しいメアリー先生なのですが、「カヒコは、伝統的なハワイのフラだから、私が習った通りに教えなくちゃいけないの。勝手にアレンジしちゃいけないのよ」と、厳しい表情。クールなサラも、「カヒコは、笑わないでいいから好き」と言うので、何となくですが、「カヒコは普段見慣れている優雅なフラではなく、しかめっ面で踊るものなのかな?」、なんて勝手に想像をしていました。
●フラの歴史について
今回のメアリー先生。原色のTシャツがお好きなようです |
古典フラのカヒコを習うにあたり、「フラの歴史を少し勉強しなくちゃなぁ」と思いつき、ここにきてやっと、「フラとは何ぞや」という疑問にぶち当たったのでした。そんな初歩的な疑問を感じるには、いささか遅い気もするのですが、人それぞれ進歩の速度は異なりますし、少し前はフラとフラメンコの違いも分からなかった私なので、「許されるかな?」と、言い訳にならない言い訳をしながら、調べてみることにしました。前回、少しだけ触れた通り、1800年代に宣教師がアルファベットに当てはめるまで、ハワイには文字というものがありませんでした。全て口承で伝えられた訳ですが、その手段は大きく分けて、オリ(通称チャントとも言われる詩詠)、メレ(踊りを伴った歌)、フラ(踊り)の3つになります。キリスト教を基盤とした西洋文化が入ってくると、フラは一時、卑猥な踊りということで、禁止されるという悲しい歴史もありました。
メアリー先生のイプに合わせて踊ります |
●偉大なるキング・カラカウア
元々、ハワイには昔の日本と同じように万の神がいました。その中で最も有名なのが美しく凶暴な火の神「ペレ」でしょう。その他にも、豚の神がいたり、石を奉ったりしていたのですが、西洋文化の導入により、キリスト教は一神教のため、自然とハワイの伝統的な信仰や芸能は封じ込められてしまいました。その頃50年もの間、公の場でフラを踊ることが禁止されたのです。自分の国の伝統芸能が抑圧されるなんて、考えてみると悲しいですよね。
余談ですが、先日盆踊りに行って来ました。浴衣を着て東京音頭や炭坑節などを踊っていると、「日本人で良かったなぁ…」と感慨深くなりますが(私だけ?)、自分の誇るものが禁止される屈辱は、察するに余りあります。一見優雅で陽気なハワイのフラは、そんな悲しい歴史を経てきているのです。その後、キング・ディビッド・カラカウアによってハワイ・ルネッサンスが実行されます。フラが擁護され推奨され、ようやく公の場で踊られるようになったのです。
ハワイでは盆踊りも盛んです |
古典カヒコは、特定の男性にのみ許された踊りでした。今でこそ、誰でもカヒコを踊ることができますが、カヒコが神聖なものであることに変わりはなく、化粧や余計な貴金属を身に付けることはタブーとされ、マナ(精霊)が宿るとされる髪は切らないのがルールとなっているようです。
今回習ったカヒコは、ハワイ文化の再興を目指したカラカウア王についてのフラです。その名も「Kawika(カヴィカ)」、ディビッド・カラカウアのことを指します。日本に来たこともある彼は「メリーモナーク(陽気な君主)」と呼ばれ、大変人々に親しまれていたそうです。この曲も、このカラカウア王を褒め称えています。
波のようには動かしません
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高貴な王に対する尊敬の念
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最も偉大な王を褒め称える
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Kawika | |
Translated by Mary Kawena Pukui
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‘Ae,
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Eia no Kawika, ehe
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Here is David,
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Ka heke a’o na pua, ehe.
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The greatest of flowers (descendants),
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Ka uwila ma ka hikina, ehe
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He is like the lightning in the east |
Malamalama Hawai’I, ehe.
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Brightening Hawai’i. |
Ku’I e ka lono I Pelekane, ehe
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Report of him reached England |
A lohe ke kuini o Palani, ehe.
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And was heard by the Queen of France. |
Na wai e ka pua I luna, ehe
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Whose offspring is this so high above? |
Na kapa’akea he makua, ehe.
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Kapa’akea is his father. |
Ha’ina ‘ia mai ka puana, ehe
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This is the end of my praise |
Kalani Kawika he inoa, ehe.
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Of the name of David. |
Kahea: He inoa no Kawika.
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Call: In honor of David. |
ひょうたん型のイプでリズムを取ります |
●古典フラ、カッコイイ!
最初にCDの曲を聞いた時、余りのテンポの速さに驚いてしまいました。曲に合わせて踊るのは、初めは難しい、ということで、メアリー先生のイプ(ひょうたん型の楽器)と歌に合わせて、振り付けを習いました。候補者を募るので、真っ先に名乗り出て、実際にこのイプを打たせてもらいました。「ウーウーウテテ」とリズムを取りながら、親指と残りの4本の指でひょうたんを叩きます。メアリー先生の歌声もなかなかのものでした。このフラの動きと曲は早いのですが、それほど新しいハンドモーションもなかったので、この私でも何とかついて行くことができました。個人的には、今まで習ったフラの中で、一番好きかな。アウアナと呼ばれる現代フラのような優雅さはないですが、チャントとイプに合わせて踊るこのカヒコは、私の背筋を伸ばし、神聖な気持ちにさせてくれる、何か不思議な力があるような気がします。古典フラ、はっきり言って、「カッコイイ!」
(Minori)
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