1903年創刊の羅府新報
4月7日付の地元日本語新聞「ハワイ報知」に、カリフォルニア州ロサンゼルスで発行されている「羅府新報」が経営危機に陥っているという、ちょっと心配な記事が掲載されていました。
羅府新報は1903年に創刊された北米最古の邦字紙です。報道によりますと、同紙はこの3年間で75万ドル(約8300万円)の損失を出し、今年度の赤字予想額は35万ドルと公表しています。今年中に状況を改善できなければ、12月に廃刊の可能性もあるということです。
■関連記事/【特別寄稿】「アロハ年鑑」でハワイをもっと知ろう!
2009年にはサンフランシスコで発行されていた「日米タイムズ」(創刊1946年)が廃刊に追い込まれています。このときも「伝統の日系紙、歴史に幕」という見出しで、共同通信から大々的に配信されました。
羅府新報、日米タイムズと聞くたびに、ある出来事を思い出します。
あれは1999年秋のことでした。ハワイ報知の新米記者だったワタクシは、日系報道機関広報研修に招かれ、その後に東京で開かれた日系新聞大会にも、都合で出られなくなった社長に代わって出席したのでした。
大会には米国をはじめ、南米やアジア各地の日系新聞の代表が出席されまして、3日間に渡り、今後の日系新聞の在り方について熱のこもった討論が続けられました。大会期間中は日本の政府やメディア関係者との懇談も多く、当時入社2年目のワタクシは緊張の連続でありました。
移動はほとんどタクシーでしたが、そのときにいつも一緒に行動してくれたのが、羅府新報の長島幸和編集長と日米タイムズの岡田幹夫社長(ともに当時)でした。
お二人ともワタクシに丁寧に接してくれただけでなく、ユーモアに溢れ、毎回車内での楽しい雑談のおかげで、ワタクシの緊張も徐々にほぐれていきました。
海部俊樹元首相に表権訪問する日、タクシー乗り場で「かいふさんの“ふ”はどんな字だったか」という話になりました。
「“ふ”は部屋の“へ”ですよね」
「それを言うなら部屋の“ふ”でしょ。あれ?それも変だな」
3人で笑っていたところでタクシーが来ました。
運転手は坊主頭の強面のオジさんでした。「どちらまで」と無愛想に尋ねられ、「議員会館までお願いし…」と言い終わらぬうちに、車は走り出しました。
しばらくすると運転手さんが「議員会館でどなたかに会われるの?」と聞いてきましたので「海部さんです」とワタクシ。さらに運転手さんが尋ねます。「海部さんって、いま何党だっけ?」
「えーっと、最初は自民党でしたよね」
「離党して新進党じゃないかな」
「あれ?自由党だったと思いますが」
モゴモゴしているワタクシたちに「お客さん、これから会うんでしょ」と運転手さんは呆れたように言います。
車内にいや〜な空気が漂いはじめたころ、長島さんだったでしょうか、「え〜と、我々アメリカに住んでおりまして…」と、ぼそっとつぶやきました。
その言葉に運転手さんが敏感に反応しました。「外国の方なんですか〜。それはどうも失礼しました」と。
そのあとすっかり口数が少なくなったワタクシたちは、運転手さんの質問には気持ち“ガイジン口調”で答えていたのでした。
7年前に日米タイムズが廃刊になったときにも、あの日のことを思い出して、ひとり吹き出していました。懐かしさと同時に寂しさを感じながら。
羅府新報は現在、オンライン購読の契約を呼びかけています。1万人に新たに契約を結んでもらえれば存続可能ということです。
羅府新報