日系兵の苦悩、功績をマンガで紹介
これまで米陸軍第100大隊や第442連隊など、日系部隊を題材にした映画や書籍は数多く出版されてきました。
「ただ、子どもたちには難しすぎる」
ハワイ生まれのステイシー・ハヤシさんは、次世代を担う子どもたちにこそ日系兵の功績を知ってもらいたいと、イラストレーターのデーモン・ウォングさんの協力を得て、 マンガで紹介することを決意します。
それからハヤシさんは第100大隊や第442連隊のクラブハウスに通い詰め、ベテラン(退役軍人)の人たちから当時の体験を聞き出しました。マンガに登場するキャラクターは「チビ」と呼ばれ、可愛らしく、ユーモアに溢れていますが、兵士らの過酷な体験は史実にしっかりと沿ってパワフルに描かれています。
ハヤシさんはベテランたちと多くの時間を過ごし、ファミリーのような親密な関係を築き上げていきました。50歳以上も年の離れた、娘のような、孫のようなハヤシさんのために、ベテランのみなさんは戦争体験を語り続けました。「チビ」たちの会話は、実際に交わされたものであるからでしょうか、マンガといえども臨場感にあふれています。それとハワイならではの「ピジン英語」も楽しいですよ。
マンガは州内の学校や図書館などに少しずつ寄贈しているそうです。
ハヤシさんと彼女のマンガ「ジャーニー・オブ・ヒーローズ」のことを知ったのは、マンガに登場する日系兵のひとり、ゴロー・スミダさんのお葬式でした。2012年11月に92歳で亡くなったゴローさんは、夫の恩師のお父さんでした。ゴローさんへのお別れの辞でハヤシさんは、ユーモアにあふれ、本当の家族のように温かく接してくれたゴローさんに心から感謝し、マンガを通じて日系部隊のストーリーを後世に残していくことを誓っていました。
葬儀はゴローさんの人柄を反映してか、とても温かく、またときにお腹がよじれるほど笑ってしまうユーモアに満ちたものでした。
葬儀は2つの会場を使っても席が足りず、参列者が入口の外まで溢れていました。会場にはゴローさんが使用したヘルメットや銃が展示されていました。
ゴローさんは生前いつもお菓子を持ち歩き、みんなに配っていたそうで、葬儀の受付ではゴローさんの好物だったカリカリ梅やピスタチオナッツ、コーヒー飴などをジップロックに入れたおやつパックが参列者全員に配られました。
私は残念ながらゴローさんと面識はありませんが、このおやつパックからゴローさんの温かい人柄が手に取るように感じられます。
おやつパックを1つ余計にもらってしまった娘が返そうとしたところ、受付にいたベテランとみられる男性は「いいの、いいの、持っていって。ゴローならきっとアナタにいっぱいあげていたにちがいないから」と娘に言い、さらにもう1つ手渡してくれました。こういうふうに自然に、誰にでもファミリーのように接してくれる ベテランの人たちのやさしさが心にしみます。
ハワイのために、アメリカのために頑張ってくれた日系部隊、そして苦難の連続だったその家族たちのことを娘に知ってほしい、誇りに思ってほしいから、私も「ジャーニー・オブ・ヒーローズ」を購入し、娘に「いつか読んでね」と渡しました。
つい先日、娘から「日系人はなんでキャンプ(抑留施設)に連れていかれちゃったの? 」と質問されました。マンガを通して日系部隊のストーリーを後世に残したいというハヤシさんの願いは、着実に実を結んでいるようです。
マンガについての詳細はこちらのサイトまで。
http://442comicbook.com/index.html
ハヤシさんのマンガにかける想いはこちらで視聴できます。
www.youtube.com/watch?v=wgHT2d_jw4s
コメントを残す