3週間ほど前だったでしょうか、コンピュータの画面に映し出された今井雅之さんの顔を見た瞬間、私の中でなにかがストーンと落ちました。
ショックでしばらくなにも手に付きませんでした。
昨秋ガンが見つかり、舞台を降板するというそのニュースに登場した今井さんは、一瞬「俳優・今井雅之」がどんな顔だったか思い出せなくなってしまったほど、変わり果てていました。
そして、切望していた舞台復帰は叶わず、日本時間の5月28日に亡くなられました。
私は昨晩、クローゼットの奥にしまっていた、新聞記者時代の記事をまとめていた分厚いフォルダーと、当時使っていたスケジュール帳を久しぶりに取り出しました。
今井さんは私が地元の日本語新聞社「ハワイ報知」に勤務していた2000年夏、ホノルルで英語劇「ザ・ウィンド・オブ・ゴッド(神風)」を上演するということで、宣伝活動のためわが編集部を訪ねて来られました。
通常、ホテルなどでの記者会見、もしくはこちらが稽古場に出向いてインタビューをさせてもらうことが多い中、今井さんはわざわざカパラマにある社屋に来てくれました。
自ら脚本、演出、主演を務める「ザ・ウィンド・オブ・ゴッド」について1時間余り熱く語り続けてくれた今井さん。実力のある者だけが認められる世界で、「事実から目をそらさず、本音で勝負。それがオレ流」って。かっこい〜。私も夫と一緒に芝居を観に行きました。悲惨な戦争の話を、ユーモアたっぷりに描いて、私たちになにが大切なのかを訴えてくれた感動いっぱいの作品でした。
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インタビュー中は相手の目をじっと見て、一生懸命質問に答えてくれた今井さん。答えというより、言葉の一つひとつが「オレも頑張るから、お前も頑張れよ」と励ましてもらっている感じでしたねえ。
編集部の仲間から「絶対もらえよ」と頼まれていたサインをなかなか頼めずにいた私に「サインしましょうか」と今井さんは言い、「それならお言葉にあまえて」と古い棚からインスタントカメラを持ち出して、写真とサインの両方をいただきました。
この写真は手帳のカバーのポケットに入れて、いつも持ち歩いていました。そうそうこの目です。インタビュー中ずっとこの目で見られ、私はタジタジでした。
公演について話すときのキラキラした目、やる気満々の大きな声を、この目で実際に目にして、耳にしたから…
体調不良で降板を決めたことを発表する今井さんの記者会見の報道は、悲しすぎてとても見られませんでした。
でも最後まで仕事を愛し、お客さんに感謝して、最後の最後までオレ流を貫いた今井さん。本当に頑張りましたね。ご冥福を心よりお祈りします。
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