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第12回 恐怖のナイト・マーチャー

投稿者: ハワイ歩き方事務局 更新日:2007年12月12日

第12回 恐怖のナイト・マーチャー

●夜中に行進する古代の死者たち


ヌウアヌ・パリも出没地帯

「ナイト・マーチャー」(夜の行進者)という言葉を聞いたことがありますか? 何だか聞くだけでゾッとする響きのある言葉ですが、実際、ナイト・マーチャーというのはハワイでは有名な怪談なのです。「いにしえの死者達が夜中に行進し、それを見たものは殺されてしまう」という恐ろしいお話です。ハワイ語では「Ka huaka`i o ka Po」と呼ばれています。

ハワイ語辞典の著者であり、ハワイアン・カルチャーの大御所だった歴史家、故メリー・クプイさんも、編著書「ナナ・イ・ケ・クム」や「トラディションス・イン・ハワイ」の中で、ナイト・マーチャーについて詳しく語っています。それによれば、陰暦の毎月27日夜は、ハワイの大神カネにちなんだ神聖な夜。このカネの夜、何百年も前に死んだハワイの酋長達がそれぞれ戦士やカフナ(祈祷師)を引き連れて、各地を行進する… と、古来信じられてきたそうです(具体的な場所については後述)。多くの場合、ヘイアウ(古代の神殿)や墓地から、酋長が生前よく出かけたエリアに向かって、行進が進んでいくそうなのです。行進を率いる酋長の好みにより、その行列は全く無言の静かなものだったり、おどろおどろしい太鼓の響きや法螺貝(ほらがい)、ハワイ語のチャント(詠唱)、それに松明(たいまつ)まで掲げられる賑やかなものだったりするそうです。

しかも、このナイト・マーチャーの恐ろしいところは、「この行進を見たら最後、殺され、行進に加わらなければならなくなる」という点。ただし、行列の中に先祖が含まれている場合は例外で、その先祖が進み出て「あれは私の子孫です」と、酋長に命乞いをしてくれるのだそうです。

なんだか日本の「キツネの嫁入り」と、ギリシャ神話の「メドゥサの首」(その顔を正面から見たものは石になるという…)がゴチャ混ぜになったような話ですが、ナイト・マーチャーは現代ハワイでも広く信じられている伝説で、中にはこんなことを言う人すらいるほどです。「道端で発見される変死体は、実はナイト・マーチャーの犠牲者だ」。つまり、外傷がなく、心臓発作などの死因で片づけられている変死者は、ナイト・マーチャーを見たため殺されたのだ、という訳です。


聖地クアロアの山麓から、行列が進んでくるのを見た人も

もしも皆さんが深夜散歩していて、不気味な太鼓や法螺貝、大人数の足音など、どこからともなく近づいてきたら… もしくは、遠くに松明の光の行列が見え隠れしたら、一目散に逃げなければなりません もっとも、ナイト・マーチャーに出会った際、一つだけ助かる方法があります。メリー・クプイさんは、こう言っています。「行進から逃げる時間がなければ、服を脱いで裸になり、道端にひれ伏して、行列が通り過ぎるまで身動きしないこと」。呼吸も押し殺し、目を閉じている方がいいそうです。間違っても死者の行進をひと目見よう、なんて考えてはいけません。もっとも、路上で裸になり、ひれ伏すなんて、相当の勇気が必要ですが、さあ、命を取るか、プライドを取るか? 皆さんならどっちを選択するでしょうか?

●ハワイ中にある出没地帯
このナイト・マーチャーはいつも同じ道を行進している訳ですが、その通り道とされる場所が、ハワイ中には点在しています。中でも有名なのは、以前このコーナーでも紹介したクアロア・ビーチやヌウアヌ・パリ展望台、カワイアハオ・チャーチの前、その他にも、オアフ島ノースショアのモクレイア・ビーチ、それに身近なダウンタウンのヌウアヌ・アベニュー&キング・ストリートの角、同じくクイーン&アラケア・ストリートの角など、挙げればきりがありません。カメハメハ大王の故郷、ハワイ島コハラ・コーストでも、そんな場所がいくつか知られています(マウナラニ・リゾート内など)。たとえば、クアロア・ビーチでは、山麓の酋長の墓地から、「カネの夜」になると太鼓の音とともに松明の光が行進してくるのが目撃されたそうです。ほかにも、ハワイ中に無数のナイト・マーチャーの出没地帯があるのですから、夜道を歩く時は気をつけなければいけませんね(冗談です!?)。


王族の通ったカワイアハオ・チャーチ周辺にも不気味な噂が

これらのナイト・マーチャーの通り道は、やはり一般に怪現象の多発地帯として知られているのも事実。たとえば、カウアイ島ノースショアにある友人の実家も、ナイト・マーチャーの通り道とされているのですが、この家では以前から誰もいないリビングルームからハワイ語の話し声が聞こえてきたりするのだそうです。また、ある夜など、友人の弟が寝室で寝ていたところ、誰かがしきりに窓ガラスを叩いたとか。窓の外に人の気配はするのにその姿はなく、断続的に窓を叩く音だけが響き、彼は恐ろしくて窓の外を見ることもできず、朝まで毛布を被ってブルブル震えていたそうです。

この家の外でも一度、不思議なことがあったそうです。ある夜、友人の祖母が、家の前の小道を歩いていると、向こうから誰かがやってきました。暗くて顔は見えませんが近所の人だと思い、すれ違いざま「こんばんは」と声をかけ、ひょっと足元を見ると… 何とその人物に足はなく、フワフワと浮かんでいたのだそうです 同様に、ダウンタウンのクイーン&アラケア・ストリートの角に立つオフィスビルについても、誰もいない深夜のオフィスで、カタカタとタイプライターが動いていた、など、様々な不思議な話が囁かれています。やはり、霊の通り道というのは、いろいろな問題が起きやすいのでしょうか?

ちなみに、厳密にはナイト・マーチャーの仕業ではないのですが、私の友人のカネオヘの家でも、夜中に独りでにステレオが鳴る、水が勝手に流れ出すなど、一時怪現象が続いていました。そこで、カフナに家を見てもらうと、カフナはこう言いました。「家の建つ丘の下に昔、泉があって、ハワイアンはいつもそこで水を汲んでいた。だから、今でも死んだハワイアンが水を汲みに行くため、この家を通過しているのだ」。そこで、カフナは御祓いをし、友人は指示された通りに家の一角にお供えをすると、奇妙な物音はピタリとやんだとのことでした。

●深夜、窓の外を通過した大集団


「カネの夜」になると、ヘイアウから死者の行進が始まる?

ハワイには10年以上住んでいる私ですが、幸い? ナイト・マーチャーに出くわしたことはありません。ですが、カウアイ島在住のある日本人の友人には、こんな体験談があります。彼女の家は海沿いのごく小さな町にあり、その前を細い道路が一本通っています。ある夜、彼女が目を覚ますと、窓の外から「ザッザッザッザッ」と、誰かの足音が響いてきました。ベッドの中でウトウトとしながら、彼女はそれが毎日夜明けに付近をウォーキングする近所の老女二人組だろうと思い、また眠りに戻ろうとしました。ところが、いつもなら数秒で過ぎ去るその足音が、その日はいつまでも続きます。そもそも問題の足音は数十人、もしかしたらそれ以上の大集団の足音であり、「ザッザッザッザッ!」という大きな足音が、随分長く続くのでした。しかも、普段聞こえるおばあさん方の「ペチャクチャ」というオシャベリが全く聞こえず、その夜はただ足音だけが聞こえてくるのでした。

友人は、窓から外を覗いてみようかとも思いましたが、なぜか恐くて起き上がれなかったそうです。「昔見た『百鬼夜行』の図が頭に浮かんできて、ゾーッとしたわ」と友人。朝さっそく、ハワイアンの夫にその出来事を話すと、彼女の夫はしみじみとこう言ったそうです。「外を覗かなくて、本当に良かった。もしかしたらそれは、ナイト・マーチャーの足音だったかもしれないからね」。

その御主人を、「何て迷信深い」と笑いますか? ハワイにはこんな不思議な話が、今でもたくさん残っています。「郷に入れば郷に従え」、とはよく言ったもの。皆さんもこんな状況に出くわしたら、どうぞくれぐれも慎重に振る舞ってくださいね。

(森出じゅん)

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