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第10回 プウオマフカ・ヘイアウ

投稿者: ハワイ歩き方事務局 更新日:2007年12月10日

第10回 プウオマフカ・ヘイアウ

●人間の生贄も捧げられた戦いの神のヘイアウ


ここがハワイアンの聖地であることを示すハワイ州のサイン

「ヘイアウ」という言葉をご存知でしょうか? ヘイアウとは、先史時代のハワイの寺院のことを言います。豊穣の神に捧げるヘイアウ、釣りの神のヘイアウなど、様々なタイプのヘイアウがありますが、中でも戦いの神「クー」のためのヘイアウは唯一、かつて人間の生贄(いけにえ)も捧げられたという恐ろしい所でもあります。生贄が捧げられたヘイアウは特にルアキニ・ヘイアウと呼ばれ、その他のヘイアウとは歴然と区別されているのです。

今回ご紹介する「プウオマフカ・ヘイアウ」も、そんなルアキニ・ヘイアウの一つです。オアフ島ノースショアのワイメア湾を望む丘の上に建ち、オアフ島のヘイアウとしては最大。18世紀、オアフの酋長カハハナの命により、カフナ(神官)のカオプルプルが指揮を執って建造され、敷地は5エーカー(約20240平方メートル)。今でこそ石垣部分しか残っていませんが、昔は長さ50メートル幅で175メートルもの石の台座の上に、ティキ像やカフナが神託を受けるオラクルタワーなどが建ち、戦いの勝利を祈願する儀式が行われていたとされています。生贄は通常、捕虜やカプ(タブー)を破った犯罪人でしたが、それら無数のハワイアンに混じって1792年、3人のイギリス人もここで生贄にされるハメに。バンクーバー船長率いるイギリス船ダイダロス号がワイメア沖に停泊した際、水を求めて上陸した3人の船員がハワイアンに捕まり、生贄にされたということです。


ワイメア湾を見下ろす丘の上に建つオアフ島最大のヘイアウの遺跡

その歴史的価値から、プウオマフカ・ヘイアウは1965年、国定史跡に指定されましたが、それ以前も今も現役の聖地として、ハワイアンの崇拝対象となっています。今回撮影のため久しぶりに訪れた時も、ポツンと立った簡素な木のタワーには、レイや果物、ティリーフの葉に包まれた石、花はもちろん、珊瑚のカケラや線香、果ては数珠など、様々なものが供えられていました。「この地域から物を持ち出すと最高1万ドルの罰金」「ここはハワイアンの聖地です。敬意を示し、岩を動かしたり、何かで包んだりしないで下さい」といった注意書きも、いくつも設置されています。もっとも、法律云々の以前に、絶対このヘイアウでイタズラをしない方がいい理由については、後でゆっくり説明することにしましょう…

●古代のテレパシー基地だった? ヘイアウ
さて、ヘイアウに設けられた説明パネルによると、このヘイアウでは18世紀、大きなかがり火が燃やされ、海峡を挟んで対峙するカウアイ島の酋長とのコミュニケーションに使われていたそうです(カウアイ島ワイルアでもやはり火が燃やされ、シグナルに使われたとのこと)。そのほか、こんな説も耳にしたことがあります。カウアイ島との連絡の手段に使われたのはかがり火ではなく、思考の波、つまりテレパシーだった、という説です。


看板にはハワイ語でタブーを意味する「KAPU」の文字が

これによると、このヘイアウはそもそも、関係が悪化していたカウアイ島との交渉のため、カフナのカオプルプルの希望によって建てられたものだそうです。このヘイアウが建てられる前、まずは丘の真下のワイメアビーチに小さなヘイアウが建てられました。カオプルプルはそのヘイアウから、平和構築のための申し出をカウアイ島の酋長に向かって念じましたが、返事は戻ってきませんでした。「このヘイアウは計画通りに機能していない。もっと高い場所にヘイアウを建てないとダメだ」。カオプルプルはそう考え、次はワイメア湾を望む高台に壮大なヘイアウを建設。それがこのプウオマフカ・ヘイアウで、カオプルプルがここからカウアイ島に想念を送ると、「アッという間に返事が戻ってきた」ということです。最初に建てられたヘイアウの跡は、今もワイメアビーチに、わずかながら残されています。

ヘイアウが古代のテレパシー基地だった… なんていうと、どうしてもSFめいた絵空事のように聞こえますね。ただ、このヘイアウの丘の端に立ち、真っ青に澄んだ空、180度に広がるカウアイ海峡を眺めていると、「ここから飛ばした想念は、確かにカウアイまで届きそうだ…」なんて気がしてくるから不思議です。


18世紀、ワイメアバレーから岩を運び上げ、大変な労力を持って築かれたヘイアウ

●宙から聞こえた不思議な呼び声
最後にもう一つ、最近耳にしたプウオマフカ・ヘイアウでの不思議な出来事を、是非ご紹介したいと思います。先日、クアロアビーチでキャンプした際に、見知らぬ白人女性がシェアしてくれた体験談なのです。その時、ビーチにはコア製の立派なカヌーが停泊しており、そのカヌーの話から、いつの間にかハワイアン・カルチャーへの敬意という話題に発展。それをきっかけに女性がシェアしてくれたのが、プウオマフカ・ヘイアウで起こった次のような怖い話だったのです。


この日もレイや食物のほか、珊瑚や線香、数珠など様々なものが供えられていました

なんでもそのバーバラさんは約30年前、10代前半の時にアメリカ本土からワイメア湾近くに引っ越してきたのだそうです。遊び盛りだったバーバラさんは、当時よく夜中に家を抜け出しては、近所の友人とドライブに出かけたとか。そんなある夜、男の子たちと肝試しをしようということになり、5、6人で真夜中のヘイアウへと出かけました。聖地とはいっても、このヘイアウに石垣程度しか残っていないのは、すでにお話した通り。ハワイに来たばかりでハワイ固有の文化への理解がなかったバーバラさんと友人たちは、そんなヘイアウを見て笑いました。「いったい、これのどこが聖地なの ただの瓦礫の山じゃない」。「そんなことを言って、私たちはゲラゲラと笑いました」とバーバラさん。


人の出入りが多い日中に訪れ、早朝や夕方以降は出かけないようにしましょう

ヘイアウのあちこちには、ティリーフの葉に包んだ石がお供えとして置かれていました。ハワイでティリーフは、邪悪な霊を払う神聖な植物と信じられており、魂が宿るとされる石もまた、ハワイではポハクと呼ばれ、信仰の対象になるほどなのです。だから、ティリーフで包んだ石というのは、ヘイアウのほか、滝や森の中など、ハワイでよく見られるお供えの一つなのです。バーバラさんは、そのうちの一つをつかむとティリーフを投げ捨て、中の石を遠くに放り投げたのだそうです。ひどく罰当りな恐ろしい行為でしたが、ハワイ新参者のバーバラさんは、そんなことを知る由もありませんでした… 「ところが石を投げて数秒後、『バーバラ、バーバラ』と、どこからともなく私の名を呼ぶ声が聞こえてきたの」。バーバラさんはその時、友人の一人がイタズラしているのかと思ったそうです。しかし、声の主を求めて進んでいくと、崖っぷちに行きついてしまいました。その声は、なんと崖を越えた宙から聞こえてくるのでした。


遺跡のあちこちに州による説明パネルが設置されています

呆気にとられたバーバラさんたちが崖っぷちに立ち尽くしていると、今度は空中に、白いモヤのようなものが現れました。白いモヤはやがて人間の形へと変化。そして白い人間は空中で、しゃがんでは岩を積み、しゃがんでは岩を積み、と、まるで石垣を築くような動作を繰り返したというのです。それを見て一行は悲鳴をあげながら車に戻り、自宅に逃げ帰りましたが、バーバラさんの恐怖体験はそれで終わりではありませんでした。

「今度は毎晩悪夢を見るようになって。内容はいつも同じで、人型の白いモヤが出てきて、あの石垣を築く動作を繰り返すのです」とバーバラさん。夜も眠れず、やつれ果てたバーバラさんを見て、母親は事情を尋ねました。そこでバーバラさんが全てを打ち明けると、母親は近所に住むカフナを呼びました。カフナはバーバラさんを見るなり言ったそうです。「ヘイアウから、霊を連れ帰ってきている」。カフナは霊にバーバラさんの無礼な振る舞いを詫び、バーバラさんも同様にして、やっと霊はヘイアウに帰った、ということです。

最後に、バーバラさんはしみじみと言いました。「あれから30年経つけれど、あの夜のことは昨日のようにハッキリ覚えているわ。あれから私は、それが道端のただの石垣であっても、決して足をかけたり乗り越えたりしないようにしているの。随分遠回りになっても迂回して、石垣を避けるようにしています」。その出来事以来、バーバラさんは「ハワイの文化をバカにしたりすることはなくなり、無礼な真似は絶対にしなくなった」との話でした。


海を望むこの崖の向こうから、不思議な声が…

●逸話を巡る不思議な因縁
今回のテーマ、プウオマフカ・ヘイアウについて書くにあたり、実は苦心惨憺(さんたん)だったのですが、そんなある日、クアロアビーチで、思いがけなくバーバラさんから体験談を聞くことになったのは、あまりにラッキーで不思議な偶然でした。というより、私には、それがただの偶然だったとは思えません。私がヘイアウの情報を求めていたから話を引き寄せた、というのも可能性の一つ(「求めよ、さらば与えられん」の世界ですね)。でも、私には、どうもこの話の方から、私のもとに飛び込んできたような気がしてならないのです。

私は考えました。「もしかしたら…」。このヘイアウを訪れる観光客がバーバラさんのような過ちを犯さないよう、この逸話の方から、私のもとにやって来たのではないのか。つまり、ヘイアウの守護霊だか何かが、この話を書いて欲しくて、向こうから私を探しあてたのではないのか? と。確かに突拍子もない考えではありますが、そんなことを考えながら、今回久しぶりに訪れたヘイアウの説明パネルで、「多くの人々が下の谷から岩を運び上げ、並べた」との箇所を読むにつけ、バーバラさんの見た白いモヤの動きを思い出しては再び「ゾーッ」としてしまったのでした。そんな訳で、最後に、このヘイアウを訪れる時には、「決して岩を崩したり、お供え物に触ったりなど、無礼なことをしないよう」強くお願いしたいと思います。バーバラさんの二の舞を演ずるのは… 誰だってイヤですものね


ププケア・ロードを進み、この看板の角を右折して数分でヘイアウに到着

プウオマフカ・ヘイアウ
Puu O Mahuka Heiau
行き方:ホノルルからはH-2フリーウェイ経由でカメハメハ・ハイウェイへ。右手にワイメアフォールズ・パークのサインを過ぎ、左手にワイメワ湾を越えて1、2分行き、フードランドの手前のPupukea Roadを右折。山道を3、4分進むとヘイアウを示す看板が右手にあるので右折し、さらに3、4分登るとヘイアウ横の駐車場に。バスなら、アラモアナ・センター発の52番で約1時間

(森出じゅん)

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2 responses to 第10回 プウオマフカ・ヘイアウ

  1. 匿名さま、コメントありがとうございます。そうですね。感謝しなければですね。

  2. 昔も今も石や岩にもイシキがあるということですね。
    感謝したいです。

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