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第14回 ワシントン・プレイス

投稿者: ハワイ歩き方事務局 更新日:2007年12月14日

第14回 ワシントン・プレイス

●女王が「悲しみの余生」を送った白亜の館


ハワイ最後の女王リリウオカラニが隠遁生活を送ったワシントン・プレイス

ホノルルのダウンタウンにある行政区の一角に、「ワシントン・プレイス」と呼ばれる白亜の豪邸があるのを、ご存知でしょうか? これはハワイ州知事の官邸で、1922年以来、歴代の州知事13人が生活したという建物なのです。それ以前はハワイ王朝最後の女王、リリウオカラニの邸宅でした。1893年にハワイ王朝がクーデターにより転覆され、王座を追われたリリウオカラニ。女王はこの館を建てたアメリカ人貿易商、ジョン・ドミノスの息子と結婚していたため、失脚後、1917年に亡くなるまでの失意の日々を、この屋敷で過ごしたのでした。

ワシントン・プレイスは過去、一般公開されていませんでしたが、現在は全館をミュージアムとして公開するべく、準備が着々と進行中です(オープン時期は未定)。今は毎週水曜日に限り、予約制で個人ツアーを行っているほか、クリスマスやイースターなどの特別な機会にオープンハウス(一般公開)も催され、100年以上も前の女王の生活の様子を垣間見ることができます。10月初旬にもオープンハウスがあり、初めて内部を見学してきました。そこで、今回はこのワシントン・プレイスにまつわるちょっと不思議な話を、ご紹介したいと思います。

●ピアノ室に流れる冷気


年老いた女王が亡くなった寝室には、今だに悲しみの空気がこもっているよう

カメハメハ大王以来、100年続いた王国を奪われるという悲惨な経験から、この館の主だったリリウオカラニ女王は、「悲劇の女王」「最後の女王」というような言葉でよく形容される人物です。そのためなのでしょう、女王に関する不思議な話というのは、本当にあちこちで聞かれます。以前にご紹介したイオラニ宮殿や、女王も通ったカワイアハオ教会、女王の銅像が立つ州庁舎など… もちろん、ワシントン・プレイスについても、そんな話がチラホラ聞こえてきます。

よく聞くのは、「ジュエリーの怪」。館の中にはいくつかガラスケースがあり、女王が生前愛用したジュエリーが展示されています。そのガラスケースの鍵はある団体が保管しており、月に一度、ジュエリーの手入れをしているのですが、このジュエリーが行くたびにひっくり返っていたり、向きが変わっていたりする… というのです。普段は鍵が締まっており、時の州知事ですら手を触れることができないはずなのに、何故、そんなことが? まさか、今も時々女王が、お気に入りのジュエリーを手に取っては眺めている… なんてワケはないでしょうに。

ワシントン・プレイスで永年働くある知人の女性は、こんなことを言っています。玄関を入ってすぐ右に、小さなピアノ室があります。そこには、リリウオカラニの愛した立派なコア・ウッドのピアノがあり、後ろの壁際にはハワイの王様の象徴である2本の「カヒリ」が立っているのですが … カヒリというのは、昔ハワイ王族のシンボルだった、鳥の羽飾りがついた棒のことを言います。長さ2-3メートルもあり、かつては召使いが王族の後ろからそれを掲げて歩いたものでした(それぞれの王族が独自のカヒリを持っていたので、遠くからでもカヒリを見て「ああ、誰々がやってくる」と、一目で分かったそうです)。

こうして王族と強いつながりを持つものなのですが、その女性は「右側のカヒリには恐くて近づけない」と言うのです。というのも、右のカヒリ周辺の空気は何故だかいつもヒンヤリとしていて、そばの壁まで冷たくなっているそうなのです。近づくたびに、「ゾゾッ」と寒気がしてしまって、と女性スタッフ。今だに、そこに誰か控えている訳ではないでしょうが、彼女は「あのカヒリはピアノ室の守護神のようなものだから」なんて、聞いているこちらが怖くなるようなことを言うのでした。


庭には女王の横顔と女王の作った名曲「アロハ・オエ」の歌詞が刻まれた銅版も設置

●悲しみのエネルギーが籠もった寝室
ピアノ室を過ぎると、今度は左手に小さな寝室があります。実は1917年、リリウオカラニが亡くなったのが、まさにこの部屋。リリウオカラニが使っていたマホガニーのベッドがそのまま残されていますが、知人の女性はこの部屋についても、こんなことを言うのです。「その部屋に入ると、深い悲しみ、陰鬱な空気を感じて、気分が落ち込んでしまうの」。廊下を歩いていて寝室の入口の前を通るだけで、悲しい空気を感じるのだそうです。晩年はすっかり足が弱くなり、2階の主寝室が使えなくなったリリウオカラニが、長い間ふせっていたのがこの部屋なのです。病床でのリリウオカラニの寂しさ、苦しみ、悲しみなど諸々の思考のエネルギーを、もしかしたらその部屋は、まだ鮮やかに記憶しているのかもしれませんね。

この寝室に関しては、もう一つ、こんな守衛の証言もあります。ある夜、その守衛が広い庭を巡回していると、どこからともなく「プ?ン」と葉巻の匂いがすることがあるのだそうです。草木も眠る? 真夜中のことで、もちろん周囲に人影はありません。それは特に、この寝室の外で感じられるのだとか… ちなみに、当時の女性には珍しく、リリウオカラニは葉巻を愛好していたことが知られています(お気に入りのパイプや、葉巻を吸うリリウオカラニの写真が、今も残されています)。そのため、スタッフの間では「リリウオカラニが、今だに部屋で葉巻を楽しんでいるのだろう」と、噂されているとのことでした。


女王愛用のコアのピアノ。後ろに部屋の守護神カヒリが飾られています

官邸が新築された本当の理由は?
そのほかにも、「2階の主寝室に見知らぬ女性がいるのを守衛が目撃した」とか、「2代前のジョン・ワイへエ元知事の娘さんが、誰もいないはずの1階から男性の影が階段を上がってくるのを見て悲鳴を上げた」等々、何かと不思議な話に溢れているワシントン・プレイス。そんな意味からも興味津々でワシントン・プレイスを訪れたのですが、オープンハウスのその朝、邸内は柔らかな朝の陽光に照らされ、大変爽やかな空気に満ちていました。ネガティブな空気や陰鬱さは全く感じられず、それこそ、コアのピアノの輝きやその上に刻印されたハワイ王朝の紋章、リリウオカラニの亡くなったベッドにかけられていた見事なハワイアン・キルトなど、数々の芸術的な遺物の見事さに、ただただ感心して、館を後にしたのですが…. もしかしたら、それは「知らぬが仏」の世界だったのかもしれません。

というのも、このワシントン・プレイス、冒頭で「ハワイ州知事官邸」と書きましたが、昨年、敷地内に別棟が新築され、厳密に言えば今はそちらが州知事官邸として機能しています。旧官邸は、博物館、州知事主催のイベント会場として、今後利用されていく計画となっています。この新計画を発案したのは、昨年まで8年間にわたり知事を務めた、ベン・カエタノ氏。「ハワイの歴史遺産を州民の手に戻し、博物館として公開しよう」というのが理由でしたが、「果たして、本当にそれだけだろうか?」と、訝しがる人たちもいるのは事実。「怪現象があまりに多い古い建物に、もう州知事は住みたくないのでは?」なんて意見も、実際には囁かれているんです。この点、私も同感。皆さんは、どう思われますか?

ワシントン・プレイス
Washington Place

場所:320 S. Beretania St Honolulu HI 96813
行き方:ワイキキからザ・バス2番、13番、エクスプレスB番バスで約20分。ハワイ州庁舎からベレタニア・ストリートを渡って山側
電話:808-586-0157
毎週水曜の個人ツアー:予約制で無料ですが、できれば数ドルの寄付を

(森出じゅん)

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