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第19回 ダイヤモンドヘッド周辺

投稿者: ハワイ歩き方事務局 更新日:2007年12月23日

第19回 ダイヤモンドヘッド周辺

●埋葬や囚人の処刑にも使われたクレーター


数々の伝説が残るダイヤモンドヘッド&カピオラニ公園周辺

「ダイヤモンドヘッド」と言えば、ハワイのシンボルですよね。標高は約230メートル。山というより小高い丘という感じなので、クレーターまでの道のりは、手軽なハイキングコースとして人気を呼んでいます。裾野には、ホノルル動物園やワイキキ水族館、カピオラニ公園などが広がり、一帯は、閑静な高級住宅地にもなっています。

このダイヤモンドヘッド周辺が、実は古代ハワイの歴史が色濃く残る、大変ディープなエリアでもあることをご存知でしょうか? かつては数々のヘイアウ(古代の寺院)が存在し、うち一つは、かつてオアフ島の酋長をはじめ、大勢が生贄(いけにえ)にされたという、いわく付きのヘイアウだったのです。そこで、今回はダイヤモンドヘッド周辺のミステリアスな側面について、じっくりご紹介しましょう。


ダイヤモンドヘッド展望台のすぐ手前、灯台周辺に2つのヘイアウがありました

ダイヤモンドヘッドが誕生したのは、今から約10万年前。火山の女神ペレがタヒチからハワイにやってきた際、ハワイ島キラウエアに定住する前に各島を巡り、永遠の炎を保てる住居を求めて穴を掘ったという伝説があります。そのうちの一つが、ダイヤモンドヘッドのクレーターなんだそうです。ハワイ語名は「LEAHIレアヒ」。というのも、姿がアヒ(マグロ)の頭に似ていることによる命名、という説もありますが、通説は「レアヒ=炎の渦巻き」というものです。これは、かつてクレーターの縁に、カヌーの到着地点を示すシグナルとして、大きなかがり火が燃えていたことに由来する名称なのです。

ワイキキにハワイアンが定住したのは、10世紀から12世紀頃とされていますが、早くからクレーターを含むダイヤモンドヘッド周辺にも、ハワイアンは足を踏み入れていたのです。たとえば、クレーター内の崖は、酋長一族の埋葬所として使われていたそうです。切り立った崖には、今なお洞窟が隠され、埋葬品や遺体が眠っているという説もあります。クレーターはまた、罪人の処刑にも使われていたとか。罪人は生きたままクレーターの縁から崖下に投げ落とされ、死体はそのまま野ざらしにされたのでした。


ダイヤモンドヘッドのクレーターの縁には風の神を祀る「アヒ・ヘイアウ」があったそうです

●数々のヘイアウも点在
山、特に火山のクレーターを神聖視するハワイアン・カルチャーの常で、宗教的な目的での使用も多かったようです。これを裏付けるように、この一帯には大小のヘイアウがあったことが、ビショップ博物館の調査で確認されています。前述した、かがり火を灯したダイヤモンドヘッド・クレーターの縁には、風の神を祀る「アヒ・ヘイアウ」がありました。その他、ダイヤモンドヘッドの海側、現在、灯台が立つ地点のすぐ西側には、漁師の保護を目的に建てられた「マカフナ・ヘイアウ」があり、海の神であるカネとカナロアが祀られていました。さらにその西側、海を見下ろす崖の上には、サーファーが海に入る前にお参りをしたサーファーのためのヘイアウもありました。

カピオラニ公園の中にも、いくつかのヘイアウがあったことが知られています。公園の東端には「カプア・ヘイアウ」があり、またその近く、今はアーチェリー場やテニスコートがある辺りには、グルリと石の壁に囲まれた「クパラハ・ヘイアウ」がありました。19世紀の著名なハワイの歴史家、サミュエル・カマカウによれば、このクパラマ・ヘイアウでは1803年、カメハメハ大王の息子リホリホ(後のカメハメハ2世)が成年になった式典が、大々的に行われたそうです。残念ながら、今ではそれらの遺跡を見られませんが、お馴染みのカピオラニ公園の敷地を、昔カメハメハ大王や家族達が歩き回っていたのかと思うと、何だかゾクゾクしますね


公園のアーチェリー場一帯には昔、「クパラハ・ヘイアウ」が建っていました

●オアフ島の酋長が生贄にされたヘイアウ
もう一つ、カピオラニ公園のアーチェリー場のすぐ横、ダイヤモンドヘッドとの間にはさまれた高台には、一帯では最大の「パパエナエナ・ヘイアウ」が広がっていました。このヘイアウは15世紀に建てられたという説と、マウイ島の酋長カへキリがオアフ島を征服した際に建てた、という2つの説が有力。いずれにしろ、それは戦いの神クーを祀るヘイアウで、人間の生贄が多数捧げられたのは事実です。マウイの酋長カへキリはオアフ島の酋長を捕らえると、さっそくここで生贄として捧げたのだそうです。そして、1795年、ハワイ島出身のカメハメハ大王がオアフ島を制圧すると、今度は先のマウイ島の酋長の息子カラニプクレが、このヘイアウで生贄にされてしまいました。

パパエナエナ・ヘイアウは、その後もカメハメハの守護神で戦いの神クーを祀るヘイアウとして、重要な位置を占めていました。後年、カメハメハ軍はオアフ島からカウアイ島に遠征し、カウアイ征服を企てましたが、失敗。1804年、カメハメハはこのヘイアウで、3人の生贄を捧げて戦いの勝利を祈願する儀式を行いました。ある西洋人の日記に、儀式の恐ろしい様子が次のように記されています。

「カフナ(神官)は3人の人間と400頭のイノシシ、たくさんのヤシの実を供え物として用意した。儀式の3日前、3人の人間の目玉はくり抜かれ、腕、足の骨は折られて、ある建物の中に放置された。儀式の日、1人はティキ像の足元に置かれ、2人はイノシシや果物と共に祭壇に設置された。そして、棍棒で肩の上を殴られ、殺された」

また、他の機会に、カメハメハ大王の妻の愛人だった若者が、生贄にされたこともありました。妻のカアフマヌは、丘の上のへイアウで朽ちていく恋人の遺体を想って涙にくれた… との逸話が今でも残っています。


カピオラニ公園のすぐ横、タウンハウスが建つ高台に戦いの神のためのヘイアウがありました

●跡地に建つゴージャスな家々
このように恐ろしい儀式が多数行われたパパエナエナ・ヘイアウの跡には、今ではゴージャスなタウンハウスの集合体「ラ・ピエトラ・サークル」が建っています。以前、一帯の10エーカー(1エーカーは約4046平方メートル)は名門女子校ラ・ピエトラの所有地でしたが、うち5エーカーを同校の敷地として残し、残りは「ラ・ピエトラ・サークル」という名のゲート付きコミュニティとして、開発されたのでした。ダイヤモンドヘッド沖が一望できる素晴らしい眺望のこれらの家々は、一軒70万ドル?100万ドルという、超豪華なタウンハウス。もちろん、その敷地内には、ヘイアウの形跡は何も残されていません。

今回話を伺ったラ・ピエトロ校のA教師によれば、「カピオラニ公園とビーチに挟まれた部分のカラカウア・アベニューが造られた際、ヘイアウを構成していた数万個の石は全てヘイアウ跡から持ち出され、建設に使われた」とのことでした。それは、カメハメハ大王の死後、実権を握った妻カアフマヌがキリスト教に改宗し、ハワイ古来の宗教を禁じた1819年から数年後のこと。「忌まわしいヘイアウの記憶を消し去りたくて、パパエナエナ・ヘイアウは徹底的に破壊されてしまったのではないか?」とA教師。

「このような恐ろしいヘイアウの跡地に住むのは、どんな気分なのか?」。住んでいる人達に聞いてみたい気もしましたが、やめました。A教師に「私だったら聞かない。住民はそのヘイアウのことを話したがらない。そんなヘイアウの跡に家なんか建つべきじゃなかったことを、彼らだって承知しているはずだからね。ヘイアウのことなんか忘れたいのでは」と助言されたからなのです。それでも、入口のゲートに立っていた守衛にヘイアウ跡の有無を聞いてみましたが、「ヘイアウの話なんて聞いたことがないよ」と、けんもほろろに追い払われてしまいました。


忌まわしい? ヘイアウを崩しての道路が建設された?
では、住宅地に隣接する、A教師の勤め先ラ・ピエトラ校ではどうなのでしょうか? 学校に恐い噂はあるかと聞くと、「生徒達はいろいろ噂しているけど、私は信じない」とA教師。「死んだハワイアンが、夜になると校庭を通ってダイヤモンドヘッドに向かって行進していく、とかという話はよく聞くけれど、僕は作り話だと思う」。もっとも、「学校のすぐ隣に血塗られたヘイアウがあったことは、生徒の間では周知の事実だ」ということでした。

ともあれ、観光客や地元の人々で常に賑わうダイヤモンドヘッドの裾野、カピオラニ公園周辺に、こんな奥深い歴史があったなんて、驚きですね。緑と陽光溢れるこのエリアが、これからは少し、違う印象で目に映りそうです。

さて、約1年半にわたり、ハワイ各地の伝説の地&ミステリアスな逸話を紹介してきましたが、今回でひとまずお休みをいただくことになりました。長い間ご愛読、有難うございました 将来、ネイバー・アイランドの聖地の紹介などを含め、復活する可能性も検討しておりますが、その際には、またよろしくお願い致します。では、またお目にかかる日まで… ALOHA

(森出じゅん)

■アクティビティ/ ダイヤモンドヘッド・トレイル

この記事が属するカテゴリー: カルチャー, モオレロ
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1 response to 第19回 ダイヤモンドヘッド周辺

  1. 先週ダイヤモンドヘッドに上ったらトンネルにこの世界でない人がいたので気になっていました。そういうことでしたか。
    この情報に感謝いたします。

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