編集部:前回はレストランの地産地消のことなどについてお聞きしましたが、次はシェフご自身のことについてお聞きします。まずシェフになろうと思ったきっかけを教えてもらえますか? もともと料理が好きだったんですか?
アラン・ウォン・シェフ(以下シェフ):最初はレストランの皿洗いをやってたんですよ。序列からいって、その次はバスボーイ(ウェイターの補佐)と続きます。フロントデスクやキャッシャーもレストランマネージャーもやったし、その順番に進んでいっただけなんですよね。
それである人に、学校に行って料理のことを勉強するべきだ、そうしたらワイキキのホテルの料飲部マネージャーになれると言われたんですよ。それで学校に行ってキッチンのことを勉強していたら、自分がそれが好きだってことに気づいたわけなんです。学校ではケーキやパン作りも習ったけれど、それまで自分がそんなものを作れるなんて思ったこともなかったし、買ってくるものだと思っていたから、いろんな発見がありましたよ。
編集部:シェフが初めて料理をしたのは何才のときですか? シェフのお母さんは日本人なんですよね。お母さんが作ってくれるのはどんな料理でしたか?
シェフ:私の本でも紹介しているんですが、4才のときにキッチンカウンターの上にのって(!)キュウリを切っている写真が残っていますよ。これは日本でのことですよ。(下の写真) 母が小さい頃に作ってくれていたのは和食でした。たぶんあなたたちと同じものを食べて育ちましたよ。
編集部:お母さんから料理を教わったことはありますか?それにおじいさんが料理人だとお聞きしたんですが…。
シェフ:ないですね。でも料理をするとき、その味付けは自分が口にしてきたのと同じ味になるものなんですよ。味見して塩やしょうゆをちょっとプラスして、また味見して…。そうやって完成した味付けは、自分が小さい頃から口にしてきたものと同じになるんですよね。私の中国人のおじいさんは優秀な料理人で、母も2人とも素材の味をいかしたシンプルな味付けをしていました。それが今の私がする味付けと同じものになっていると思うんですよね。
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編集部:好きな食べ物は何ですか?
シェフ:ローカルのテレビ番組で、思い出のメニューを2つ挙げるように聞かれたんですが、そこで答えたのは、1つは卵かけごはん。2つ目はみそ汁です。みそ汁も自分で時々作りますよ。でも母が横で見てるからね(笑) そのテレビ番組で、地元農家の卵を使って、どうやって卵かけごはんを作るか見せてあげたんですよ。高価なわけじゃないし、手早くできるからね、よく食べてますよ。
編集部:では嫌いな食べ物は何ですか?
シェフ:内臓系が全部ダメ。小さいときはコーンと豆、トマト以外は野菜も全部ダメでした。母が甘やかしていたんだと思うんだけれど、小学生のとき野菜が給食で出て「アレルギーがあるから食べられません」って先生に言って。それから野菜を隠すようにしたんだけれど、最後はポケットに野菜を隠したんですよ。にんじんスティックなんかは隠しやすいけれど、ブロッコリーもクリームほうれん草も水分を含んでいようがポケットに入れてね。ポケットの周りがぐっしょり濡れちゃって、母はいつもそれを洗濯してくれていたんですよ。だから母は信じられないと思うね、今料理人をやっているんだから(笑)。
編集部:では今は野菜は好きなんですね?
シェフ:……。料理人は何でも試さないといけないからね。シェフになりたかったら、何でも食べてみないと。 面白いことに、若いときは甘い食べ物が好きだったけれど、昔に比べて苦い味のものが今は好きになっているんですよね。
編集部:日本に行くときに必ず食べるものはありますか?
シェフ:まぐろ、トロ…。寿司だね。クオリティが全然違うから。銀座すきやばし次郎に行けたのはラッキーでした。今まで食べた中で一番おいしい寿司でしたね。それから昔は日本に行ったときはカレーライスやとんかつなど食べて、ハワイのものと比べていましたよ。似ているところもあれば、全然違うところもある。ハワイの和食は、きっと日本からの移民の人が、ハワイで手に入る食材で作ったものだと思うからね。
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編集部:では日本からハワイに旅行に来る方にどんなことをおすすめしますか?
シェフ:もしワイキキに滞在しているなら、ワイキキの外に出て地域のコミュニティを覗きに行くといいと思います。そうすると地元の人がどんな暮らしをしているかわかるし、ファーマーズマーケットもいいね。地元の人がどんな物を買ってどんな物を食べているからわかるからね。レンタカーを1日借りてまわってもいいし、ワイキキとは全然違うところを見ることができるから。
編集部:では最後に、このレストランを訪れた人に、どんな食事やどんな時間を提供したいとお考えですか?
シェフ:ぜひ「ハワイを食して」もらいたいですね。ハワイにいるのだから、ハワイの味を楽しんでほしいですね。
●アラン・ウォン プロフィール 日本人の母とチャイニーズハワイアンの父の間に誕生。東京で生まれて5才のときにハワイへ移住。ハワイのパイナップルプランテーションでパイナップルの収穫を手伝っていた経験やニューヨークで3年間働いた経験もある。オーナーシェフを務める「アラン・ウォンズ」は地産地消をテーマにし、ハワイで独自に進化したハワイ・リージョナル・キュイジーヌが楽しめる代表的レストランで、数々の賞を受賞しオバマ大統領が訪れることでも有名。
◎アラン・ウォンズ・ホノルル 場所:1857 S. King Street, 3rd Floor Honolulu, HI 96826 電話:(808)949-2526 ウェブ(英語):www.alanwongs.com ※アラン・ウォンズではこちらのページからレストランの日本語でのオンライン予約が可能です。

(2014年8月更新)
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